すしに専門用語や隠語はある?すし屋の符丁についてすしマニアが解説

例えば、すし飯のことをシャリ、お茶のことはアガリ、ワサビがナミダなど、すし屋には独特の専門用語があります。これを符丁といいますが、どのようなものがあるのでしょうか?

ここではすしに関する本を多く出版してきたすしマニア編集部がすし屋の符丁について解説していきます。すしに詳しくなりたい人におすすめ!

すし屋の符丁とはどんなもの?

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まず、符丁という言葉について、これは業界の専門用語であり、隠語でもあります。どんな商売にも符丁があり、業界専門用語があるもの。知っていれば通ということにはなるでしょう。

もちろん、知らなくても恥ではありません。ただし、いつのまにか、広く知られるようになったものがあり、これくらいは知っておいたほうが、すしがいっそう楽しくなりそうなものをあげてみましょう。

すし全般に使われている符丁

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■シャリ
すし飯のことで、仏舎利からきているもの。お釈迦様の遺骨は、白くて細かくて似ているからというのが理由。

■ナミダ
ワサビのことで、あまりききすぎると、涙がでるから。

■ムラサキ
色からついた言葉で、醬油のことをいいます。

■アガリ
お茶のこと。花柳界からきた言葉で、本来は最後に出すお茶を指していました。

■ガリ
生姜のこと。噛むと、ガリガリいうから。また、削るときにがリガリ音がするから。

■タネ
材料のこと。すしダネ、上ダネ、というように使う。ネタというとやや下品な感じに。

■ヤマ
笹のこと。山からとるからとか、形が似ているから…といわれます。すしを盛るときに使用。

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■つけ場
すしは作るとはいわず、つけるといいます。醬油や酢に漬け込む仕事が昔は多く、そこで調理場をつけ場といいました。もっと古くは、すしは魚介類のつけものであり、「つける」という言葉のルーツは古いのです。

■立ち
昔は内店でも屋台店でも座って握っていました。やがて、屋台の形が店内に持ち込まれてから立って握るようになり、その仕事を立ち仕事と呼びます。そして、カウンターの客を立ちの客をいうようになりました。

■数の符丁
一をピン、二をノの字、三をゲタなどといいますが、今はあまり使われていません。ちなみに、四はダリ、五はメの字、六はロン字、七はセイナン、八はバンド、九はキワ、十はヨロズといったらとのこと。店によって少し違いもあるようです。

すしダネの符丁

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■ギョク
漢字の玉の音読みから。玉子焼のこと。

■ヅケ
いまはあまり使われなくなった言葉で、タネを昔は醬油に漬け込んだことから。冷蔵庫のない時代の調理の工夫。マグロは必ずヅケにされたので、マグロの赤身をこう呼ぶようになりました。

■カッパ
きゅうりのこと。きゅうりの切り口が河童の頭の皿の部分に似ているからとか、河童の好物がきゅうりだったからといわれます。

■鉄火
マグロの赤身を芯にした海苔巻を鉄火巻といい、略して鉄火。昔の賭博場を鉄火場と呼ばれていたのですが、バクチをうちながら食べやすいようにと、マグロの赤身を使用した鉄火巻が作られたからとのこと。

■オドリ
クルマエビのにぎりずしでエビを生きたままで使ったもの。踊るように動くから名付けられました。

■光もの
すしダネの種類のひとつ。皮の光ったもので、コハダ、アジ、サヨリ、キス、カスゴ、サバ、イワシなどを指しています。

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■煮もの
煮ものダネのこと。ハマグリ、ホタテ貝、アナゴなど煮てから使うタネを指します。ただ今はホタテ貝も生で使われるようになり、ハマグリもあまりとれなくなって、すし屋の煮ものダネは減少傾向に。

■煮ツメ
煮ものの煮汁を煮つめたもの。ツメとも、わかりやすく甘いタレとも。アナゴやシャコなどの上に塗るもの。

■煮キリ
醬油に酒などを加えて、煮切り、醬油臭さをとばしたもの。昔はタネの多くに、ハケで塗ってから出していました。

■丸づけ・片身づけ
タネの魚一匹そのままを握るのが丸づけで、半分を握るのが片身づけ。アユの姿づけは丸づけの典型。丸づけは一枚づけともいいます。

すしの専門用語を知っているとよりすしが楽しめる!

符丁はすしの文化でもありますが、知らなくても全く問題はありません。ただ昔ながらのすし店に行く前に覚えておくと、すしがより深く楽しめるでしょう。

※画像はイメージです
※MOOK「料理と食シリーズNo. 2 すし」に掲載した内容を再編集しています