ラーメンの調味料としての塩はどんなもの?製法や旨みの違いをラーメンマニアが解説
天然塩や岩塩など、さまざまな塩が近年出回っていますが、原料はすべて同じ海水。では何が違うのか?製法や塩の種類、にがり成分の含有量などにより、違いが生まれるのです。
ここではラーメンに関する本を多く出版してきたラーメンマニア編集部が塩について解説していきましょう。ラーメンに詳しくなりたい人におすすめ!
塩の原料はすべて海水! 製法はさまざま
塩の原料はすべて海水であることは知っていますか?世界の塩資源の約6割は岩塩で、37%は海水なのですが、岩塩は大昔、地球の地殻変動によって海が陸地に閉じ込められ、水分が蒸発してできたもの。だから岩塩も海水からできており、塩はすべて海水が原料といえますね。
日本には岩塩鉱はないので、海水から塩を作る方法が主流。こちらは「天日製塩法」と「海水を濃縮して煮詰める方法」の2種があります。
「天日製塩法」は、海水を塩田に引き込み、太陽熱と風によって水分を蒸発させる方法ですが、高温多湿の日本にはこの製法は適しません。メキシコやオーストラリアなどの乾燥した沿岸地域では、この方法で「天日塩」が採られ、日本にも輸入されています。
海水を煮詰めて作る方法として、公益財団法人塩事業センターでは「イオン交換膜製塩法」を採用しています。これはイオン交換膜と電気の力で、海水からいったん濃度の高い塩水を抽出し、それを煮詰めて水分やにがりを取り除く方法。
ほかに外国から輸入した天日塩をいったん水に溶かし、それを煮詰めて不純物を取り除く「溶解再製法」もあります。塩は海水のわずか3%しかないので、いったん高濃度の海水を抽出してから煮詰める方法が採用されています。
一方、岩塩はアメリカやヨーロッパに多く存在。岩塩をそのまま掘って採掘する「乾式採鉱法」や、岩塩層に水を加えて岩塩を溶かして汲み上げる「溶解採鉱法」などがあります。
塩の旨味と味はどうやって生まれる?
塩の成分は基本的にどれも似ています。全体の97~99%ぐらいは塩化ナトリウム(NaCl)で、他ににがり成分としてマグネシウムやカルシウムなどがほんのわずか含まれる程度。しかし、わずかなにがり成分の含有量によって、塩の手触り感や味の感じ方が違ってくるのです。
例えば、にがり成分は水分を含みやすい性質をもつので、にがり含有量が高いほどしっとりした塩に。同じスプーン1杯の塩でも、さらさらした塩としっとりした塩では分量が微妙に異なります。
にがり含有量によって味の感じ方も異なります。にがり成分は塩の結晶の表面に付着しているので、直接なめた時、表面のにがり成分が溶けた後に塩(NaCl)が溶けます。その結果、にがり含有量が高いものほど、“まろやかな味”とされることが多い傾向に。
また塩の結晶の大きさによっても、直接舐めた時の味の感じ方は異なります。同じ製法で作られた同じ質量の塩では、結晶の粒が大きければ質量全体の表面積は小さいので、ゆっくり溶けます。その結果、まろやかな味とされることが多いのです。ただ、溶けてしまった後では、味の区別がつかないとされます。
塩は大変シンプルだけど奥が深い!
最近は「天然塩」や「焼き塩」という名称の塩も出回っていますが、言葉の定義やルールがまだ決められていないのが現状。塩は製法や種類、にがり成分の含有量などにより、手触り感や色、直接なめた時の味に違いが生まれます。
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※MOOK「人気店が公開する調理技術ラーメン」に掲載した内容を再編集しています