人気のインドカレーの今と昔を比べよう!『新宿 中村屋』の中村屋純印度式カリー

中村屋のインドカレーといえば、本格インドカレーの元祖的な存在。インド独立運動の志士ラス・ビハリ・ボースの本格カリーを昭和2年に発売し、『新宿 中村屋』の創業者・相馬愛蔵氏が日本人の口に合うように作りあげたロングセラーです。

時代を超えて愛される看板メニューはどのように変化してきたのでしょうか?この記事では1996年に旭屋出版から刊行された「名店の看板メニュー」を見ながら、当時の中村屋純印度式カリーと現在のカリーを比べてご紹介。

『新宿 中村屋』の名物・中村屋純印度式カリーの歴史

こちらがボース氏と創業者・相馬愛蔵氏の娘である俊子さん。やがて二人は結婚し、店内には仲睦まじい二人の写真が飾られています。

中村屋純印度式カリーは、インドから直輸入のスパイス、白目米、ヨーグルトやバターのためには牧場を経営するほど、最高の材料を集めて作り出すもの。昭和2年、まだカレーが8銭か10銭の時代、80銭で登場したのが、一世を風靡することになる“中村屋のカリー”。カレーは日本人の日常食となった今でもこのカリーが独自の位置を保ち続けているのは、原点の確かさとそこに常に立ち返ろうとする努力でしょう。

中村屋純印度式カリーは地下2階の『レストラン&カフェManna』と8階の『カジュアルレストランGranna』で提供しています

委託飼育の専用鶏、産地指定のコシヒカリ、スパイス…という最高材料の吟味、技術、そして、本場インドの食材などを使ったことから、当時一般的だった欧風カレーとの差別化になったのです。インドカレー店が増えた現在でも『中村屋』のカリーは独自の路線を歩み続けています。

「名店の看板メニュー」では当時の人気店の看板商品をたくさん並べていました

そんな中村屋純印度式カリーをフードマニアを運営する旭屋出版が刊行する「近代食堂」でもご紹介。その中で「名店の看板メニューと思想」というコーナーでは、当時の人気店の看板メニューを取材し、連載していました。こちらの「名店の看板メニュー」という本はその連載を1冊にまとめたもの。今回はこちらに掲載された1996年版の中村屋純印度式カリーと現在のカリーを比べてみましょう。

過去と現在の中村屋純印度式カリーと比較してみよう!

インドカリーの容器は今も昔も同じ!

さて、まずは20年前のメニューを見てみましょう。こちらは当時の中村屋の2階で扱っていたカリーで、上は「インドカリー」、下は「コールマンカリー」のもの。そして、3階の高級路線のレストランで提供していたのは「スペシャルインドカリー」「スペシャルコールマンカリー」。どちらにも特別飼育の若鶏を使うのですが、スペシャルの方は特に軍鶏を用い、ホールスパイスで風味付けをしているとのこと。

ちなみに、昭和54年には全館大改装が実施され、地下1階=コーヒー、1階=お茶とお菓子、2階=ランチルーム、3階=ディナールーム、4階=くつろぎのリビングルーム(パブ式のもの)、5階=パーティールームと、営業形態を各階ごとに変えて、幅広い客層に応えようとした店づくりでした。

上の1996年に撮影された写真と比べたところ、ほぼ同じような雰囲気の画像に

そして、現在のものがこちら。雰囲気も当時のままですね!当時は2階のランチルームで提供されていましたが、現在は地下2階のMannaで味わうことができます。レシピは変えておらず、中村屋の姿勢としては、鶏の飼育法も時代に沿って変えていて、玉ねぎなどの野菜の炒め方、スパイスの調合などは、季節や状態によって判断しているとのこと。細部は変わっているものの、おいしいカレーを作るためには妥協しないという姿勢はいつだって変わらない……懐かしさと同時に力強さも感じられるのが中村屋のカレーです。

25年前と比べて大きな違いといえば、薬味にレモンチャツネが加わったという点。レモンの皮と果汁を使用してチャツネにしたという個性的なピクルスで、赤玉ねぎと数十種類のスパイスで漬け込み、爽快な酸味が特徴。ちなみに、本店にはカレーのお供である「福神漬け」は一度も置いたことがないというのもこだわり。

「カリーいろいろセット」はお盆がお皿でいっぱいになるので授業員は運ぶ際、かなり緊張したとのこと

ちなみに、シェフの石崎さんに当時の話を聞いてみたところ、当時紹介していた「カリーいろいろセット」を提供していた頃、実際に作っていたので、これが非常に想い出深いメニューだったと語ってくれました。これはビーフ、チキン、エビの三種類セットが入ったもので当時の値段は1,850円。当時は純印度式カリーが1,200円、コールマンカリーが1,500円の時代だったので大サービス品といえるでしょう。

原則的に当日調理なので、3種類を同時に作るのが大変だったのですが、「中村屋のカリーをたくさん味わってほしい」というホスピタリティ溢れるメニューだったのです。3種類のカリーセットは現在扱っていないのですが、2014年からスタートした「ハーフ&ハーフセット」がそれを受け継ぐものであるとのこと。これはオードブル盛り合わせとドリンクが付き、中村屋純印度式カリーやコールマンカリー、野菜カリー、シーフドカリーから2種類選べるお得なセットで中村屋のホスピタリティを今でも感じられるセットですね。

中村屋の「伝説の高級カレー」は復活するのか…?

これは「中村屋純印度式カリー」

1996年当時、3階のディナールームではスペシャルインドカリーとスペシャルコールマンカリーを提供しており、軍鶏と生スパイスで味付けしたグレードの高いカリーメニューでした。

こちらは「コールマンカリー」

しかし、2014年に本店ビルを改装し、店舗のイメージも大幅に異なったことで、注文数も減ってしまい、現在はレギュラーメニューにはありません。シェフの石崎さんによると「イベントなどでは一時的に復活はしているし、往年のカレーマニアには今でも熱い人気があるので、いつかは復活する日もあるかもしれない…」とのこと。

『新宿 中村屋』の中村屋純印度式カリーは時代を超えて愛される看板メニュー

いかがでしたでしょうか?今でも愛される看板メニュー、『新宿 中村屋』の純印度式カリーは今も昔も変わらない味。過去と現在をミックスして楽しむというのもまたおすすめですよ!

レストラン&カフェ Manna

住所 東京都新宿区新宿3-26-13 新宿中村屋ビル地下2階
営業時間 11:00~21:00(L.O. 20:15)
定休日 1月1日
  ※記載のデータは取材時のものです。