ラーメン屋になるには?ラーメン店の開業の流れを編集部が解説

ラーメン店の運営は、新規開業店のうち、1年で半数が、3年で70%が撤退するというデータもあるほど難しいもの。それでも予算や人員の関係で、1人または少人数で開業したいという希望者も多いでしょう。

そこでラーメン店に関する本を多く出版してきたフードマニア編集部が少人数でも失敗しない、開業のポイントを解説していきます。

1、立地選び

画像素材:写真AC

少人数での開業、特に1人で開業する場合は、必要売上が少ない分、立地は物件さえあれば、例えば路地裏や住宅街など、繁華街でなくてもどこででもできると考えられるでしょう。逆をいうと、競合店の多い立地では難しいと言えます。

最もリスクのないのは、当然ですが競合店がない場所。大学など若者層が多い建物の近くの路地裏や、住宅街などがそれに当たります。やはりラーメンはどちらかというと若者の食べ物なので、若者層の通行量が多く、それでいて競合店がない、という地域を選びたいところ。これは足で探さないとまず見つからないので、業者だけに頼らず自分でも丹念に探すことをお勧めします。

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地域でいうと、まだ名古屋から西の地域がおすすめ。大阪は近年ラーメン店の出店が増えていますが、それでも東京に比べると人口当たりの店数は少ないといえるでしょう。

2、物件選び

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開業資金が乏しいケースでは、居抜き物件は出店しやすいでしょう。ただし問題なのは、居抜き物件は流行っていなかったから前の店が退店し、居抜きになることが多いこと。特に、前の店がラーメン店だと、その店のイメージがあるので開業当初からの繁盛は難しいでしょう。

前の店のイメージを払拭するには、半年~1年はかかると覚悟しなければいけません。開業資金が限られている少人数での出店では、運転資金にも余裕のないところが多いので、その期間を頑張れる体力があるかどうかも考慮したいところ。

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また、少人数での店は極小規模になるので、望む物件が出ないことも意外とあります。また物件が出ても、例えば住宅街では、臭いの問題で開業してから「ダクトを伸ばせ」などの改装を迫られることもあるので注意が必要。今日ではダクト以外に臭いの除去装置などもあるので、住宅地での開業に当たっては、こうした装置も検討しましょう。

3、店づくり

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少人数、特に1人で切り盛りするには、規模にもおのずと限界があります。カウンターだけの店なら8席から、大きくても10席が限界。無理のないところで6~8席がベストといえるので、それが無理なくつくれるスペースを選びたいところ。

しかしその規模でも、テーブル席をつくるとなると、まず間違いなく1人では回りません。カウンターなら厨房内からラーメンを出し、食器を下げることができますが、テーブル席をつくると別の動線が必要になり、繁忙時にはとても手が回らなくなるので、もう1人人員が必要になります。カウンターのみ8~10席が確保できる大きさの物件を探し、カウンターのみの店づくりをするようにしたいところ。

4、開業前後

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最初から行列をつくるような店には、ある程度のブランド力が前もって必要。したがって、現在の繁盛ラーメン店の店主も、新規開業の際は最初から人気を集める店をつくったわけではないことを知っておきましょう。そうした店主からは、「睡眠時間が1日2時間しかなく、そうした状態が3ヶ月も続いた」という話を良く聞くことも。

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スープの味が安定し、お客が入るようになるまで、文字通り体力的な苦労も多いということ。それが仕事を補助する人員がいない1人での開業だと、開業にまつわるすべての作業や雑事を1人でこなさなければなりません。ようやく開業を果たしても、最初のうちは翌日の営業準備に意外と手間取ることが多いです。スープ取りで徹夜ということも

それで無理がたたって店主がダウンすると、即、休業という事態になります。そうしたリスクもあることを知った上で開業作業に取り組みたいところ。

5、メニュー構成

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少人数での営業では、メニューは極力絞り込み、その中で個性を出すようにしなければなりません。例えばつけ麺に特化するなどの対策を考える必要が。特に1人で営業する場合は、あれもこれもとメニューがあると対応できなくなるからです。

メニューが特化した1品だけで勝負できるなら、オペレーションも楽なので慣れない開業間際でも無理なく対応可能。また仕入れや食材の管理も楽。少人数の店は規模も小さく、それだけ冷蔵庫やストックスペースの大きさも限られるので、そもそも幅広いメニュー構成では無理があります。そうしたことからも、メニューは絞り込んで特化し、地域のオンリーワン店を目指すようにしたいところ。

6、ラーメンとつけ麺

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「絞り込んだ1品」ではなく、ラーメンとつけ麺の両輪で勝負する店も。その場合、ラーメンとつけ麺ではオペレーションが違い、同時に注文されても提供時間にズレが出るので、そのことは前もって店内で了承を得る張り紙などをしておきたいところ。この点は、特に小規模店だからというわけではないのですが、こうしたことは大切です。

店側にとっては当たり前のことで、「今ではお客の側も知っている」と考える方もいるかもしれませんが、お客にとっては不満の原因になることが多いのです。またこれと同時に、順番を間違わないように前もってシステムを決めておきましょう。

7、繁忙時の人員態勢

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小規模店では、1日にさばける客数は、1人40人(2人なら80人)といわれています。こ のため、立地によっても異なりますが、忙しい店ではカウンターだけの店でも2人は必要になるということ。あるいは、昼の繁忙時だけアルバイトを入れた2人態勢の方が望ましいですね。

なぜなら、意外と手間取るのが食器交換で、麺を茹でてラーメンを作って出しながら、食べ終わった食器を下げて洗うということが難しいというのが理由です。

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丼はシンクに入れておき、時間が空いたら洗うようにすればいいのですが、小規模店で30も40も丼を用意することは難しいでしょう。スペースに余裕があれば食器洗浄器を入れて対応できますが、それでも1人ではなかなかこなすことは難しいといえます。

せっかく新規開業をした以上、店は繁盛させ利益を上げたいもの。したがって繁忙時には、少なくとも洗い物要員としてアルバイト人員は確保したいところ。

8、お冷やサービス

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お冷やについては、着席したお客に注文を聞く際にグラスを出し、後はカウンターに置いたピッチャーからセルフサービスで注いでもらう、というスタイルが多くのラーメン店で採用されています。しかし小さなカウンターだけの店では、給水機を置くことも考えたいところ。繁忙時には、「グラスを置く」 という単純な作業でさえ余裕がなくなることもあります。

給水機の近くにグラスを置いておき、カウンターに「お冷はセルフサービスでお願いします」と張り紙をしておきます。この方法だとピッチャーを置かなくて済むので、狭いカウンターでも対応でき、ピッチャー内のお冷の交換などの手間も省くことができるのです。

9、会計

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特に1人で営業する店では、会計のシステムについても決めておく必要があります。一般に「お金はどんな状態で触ったか分からないので不衛生だ」という意識があるため、ラーメンを作る手でお金の受け渡しをすると、不潔な印象を持たれてしまうからです。

そこで2人で営業する店なら、会計担当と調理担当を完全に分けておく必要があります。その場合、料金は後払いより、前払いが混乱を招かなくて済みます。注文したメニューをお客も店側も確認しながらお金の受け渡しをできるというのが強み。

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また、ラーメン店では券売機も当たり前となってきています。高額紙幣に対応したなものなら両替えで手間どる心配もないというのもメリット。コンパクトなサイズの機器も増えているので、そうした機器も積極的に利用しましょう。

ラーメン店を開業するのなら、開業の流れを抑えておこう!

ラーメン店やカフェなど、参入の比較的簡単な業種は、それだけ撤退へのハードルも低いもの。3年で70%が撤退するという厳しいラーメン業界を生き残るには、安易な考えでの出店は極力避けましょう。流れさえ掴んでおけば後は実践のみ。開業を考える人に役立つヒントになったのなら幸いです。
取材協力/大成食品㈱代表取締役・鳥居憲夫

※画像はイメージです
※「ラーメン店つけ麺店を開業する!」に掲載した内容を再編集しています