コーヒースタンド開業を目指す前に知っておきたい8のこと 資金と資格はどうする?

個人でコーヒースタンドを開くには、物件探し、資格、資金調達、メニュー決め……など、クリアすることがいっぱい!「やるからには失敗したくない」という願いにお応えすべく、カフェやコーヒーに関する本を多く出版してきたフードマニア編集部がコーヒースタンドを開業する際に最低限おさえたいポイントをまとめました。

はじめにおさえよう!3つの心得

画像素材:写真AC

その1、まずは3年続けることを目標にする
3年以内に閉店に追い込まれる店は少なくありません。そうならないために、3年は絶対に続けられる事業計画を最初に組み立てることが大切です。3年を乗り越えることができれば、自分の店の強みも弱みもわかるだろうから、お客から受け入れてもらった長所をさらに伸ばせばいいでしょう。その後は、本人の意志さえあれば、何年も店を続けることができるハズ。

画像素材:写真AC

その2、“More than expected”を意識する
あなたが、自分の店のラテに500円の値段をつけたとします。そのときに“More than expected”=期待していた以上のもの、つまりお客が500円以上の価値があると見出さなければ、リピーターなってもらうことは難しいでしょう。一人、二人で営業するコーヒースタンドの成否は「固定客がつくかどうか」。自分が提供するコーヒーは価格以上の価値はあるのか、まずは自身の胸に問いかけましょう。

画像素材:写真AC

その3、自分にしかないオリジナリティを持つ
ラテアート、スイーツ作り、JBCでの優勝経験……など、「これが私のオリジナリティ」と胸を張って言えるものをひとつでも盛っていますか?「私には何もないけれどコーヒーが好きだし、お客様の笑顔を誰よりも大事にします」。コンビニ、自動販売機、カフェ……コーヒー供給過多の日本において、これだけでは前途多難。開業前に十分勉強を重ね、自分にしかない強みを見出し磨き上げましょう。

1、コンセプトを決める

画像素材:写真AC

「なぜコーヒースタンドをやりたいと思ったのか」「何をウリにするのか」「誰をターゲットにするのか」「どこでやるのか」「いつまで続けるのか」。これらのコンセプトをあいまいにしたまま、簡単な気持ちで店をはじめるのはとっても危険!お金さえあれば開業することはできますが、都心・地方に関わらずここ日本において飲食店を3年以上存続させるのは非常に大変なこと。そのため重要なのが、このコンセプト作りです。

画像素材:写真AC

開業以降は、売上やお客の動向によってやり方を変えざるを得ない部分は出てきますが、最初に掲げたコンセプトだけは絶対に守り抜きましょう。また、店の存続という言葉に逆らうようですが、コーヒースタンドという形態においては、特に最後に挙げた「いつまで続けるのか」も大切。

5坪くらいの規模から自分一人でもスタートできるコーヒ―スタンドは、経営者としての経験を積むよい機会になりますが、なかには、イートインスペースカフェの開業や他店舗展開を目指す人も。次のステップを見据えながら、店の根幹であるコンセプト作りをしっかり行いましょう。

2、物件を探す

画像素材:写真AC

立地は、コーヒースタンドの成否をきめる大きな要素。一昔前は「店舗前通行量」というものが重視されていましたが、それより重要なのは、自分がターゲットとする客層がどのくらいいて、曜日、天候、季節によって彼らがどういう動きをするのかを把握すること。

たとえば、テイクアウトスタイルのスタンドで、ターゲット層のOLは、雨の日に傘をさしてまでコーヒーを買いに来るでしょうか?来ないとなれば、梅雨の売上げは見込めません。理想の物件を見つけるためには、とにかく自分が出店したいエリアに足しげく通うしかないのです。

画像素材:写真AC

すでにネットやチラシで出ている物件の多くは余りもので、大手コーヒーチェーンの店舗開発の営業マンがダメだと判断した物件の場合も。また、不動産用語で「千三(せんみつ)」という言葉が使われますが、これは「1000軒のうち3軒しか優良物件はない」という意味が込められています。不動産屋だけでなく、目ぼしい物件の大家のところへ何回も通って口説くくらいの気合いがなければ、理想の物件はそう簡単に見つからないと思ったほうがよいでしょう。

物件取得費用も高額なので、立地選びに失敗してもすぐに撤収できるものではありません。3年はそこから動けない、その覚悟を持って粘り強く探しましょう。

3、必要な資格/許可・申請

画像素材:写真AC

コーヒースタンドを開くにあたっては、「食品衛生責任者」の資格とともに食品衛生法に基づく営業許可が必要。コーヒーとともに、店で調理したフードやスイーツを提供するお店でも、仕入れ品の食べ物を提供するだけのお店でも「飲食店営業」が必要です。営業の仕方や都道府県ごとの条例によってそろえなければならない設備、什器などが決まっているので、まず所轄の保健所などに問い合わせましょう。

最近は、コストダウンを図って、規制のゆるい「催事」許可を取得して長期間営業を続けるケースや、見た目の悪い手洗いスペースなどを店内に設けるのを嫌がって、必要な設備を省いてしまう店があります。決められた法律は遵守しなければいけません。

画像素材:写真AC

融資を受ける際に提出が必要になる事業計画書については、少なくとも3年間、手元資金が枯渇せず店を存続できるような形で作成すること。10~20年前に言われた、「マーケットに認知されることによって、売上げは年々2%ずつ上がる」という論理はもはや神話。今の時代は、世間で話題に上がるオープン時が売り上げのピークと言うケースも。このことを念頭に置いて事業計画を立てましょう。

4、資金調達

画像素材:写真AC

開業資金については、全費用の51%は手元で用意したいものです。コーヒースタンドを開業する場合、立地や規模にもよりますが、物件取得費用をのぞき最低500万円はかかると考えていいでしょう。つまり、250万円以上は貯めておく必要があるということ。

残りの資金をどこから借り入れするかについて、まずは国や都道府県が設ける公的な開業資金を視野に入れましょう。たとえば日本政策金融公庫では、一定の条件を満たせば有利な条件で融資を受けることができるし、自治体によっては金利の半分を負担する融資制度を設けているところも。調べていくうちに、手当が厚いエリアが見つかったのなら、出店場所を変えてしまうというのもひとつの手。

画像素材:写真AC

ただし、公的機関であっても失敗しそうな店に対して融資はできないので、提出の際に必要になる事業計画書の内容が重要なカギとなります。ちなみに然るべきバリスタ大会での優勝、入賞経験などは、融資の決定材料として有利に働く場合も。

5、店舗工事

画像素材:写真AC

店舗工事については、設計事務所や工務店などに、設計・施工依頼を行う場合が多いですが、タイル貼りや壁塗りなど、できる部分は自分で行うことでコストダウンが望めます。ただし、自身がどういう店を出したいのか、またオペレーションのイメージを明確に描けていなければ、設計士も図面を書くことができません。

お客に笑顔であいさつする、オーダーを受ける、コーヒーを作る、お金を受け取って手渡す、見送る……入店から退店までの一連の流れを細部までイメージし、そのうえで、マシン、シンク、冷蔵庫などの設備類をどういう配置にすれば自分が一番動きやすいのかを考えましょう。その際は、これまで修行してきた店の経験則はもちろん、成功している店、失敗している店をできるだけ多くまわるなどしながら多くのヒントを得るとよいでしょう。

画像素材:写真AC

大手コーヒーチェーン店もオペレーションは考え抜かれているので、アイデアにつながる部分は多いですよ。くれぐれも、お客に自慢のマシンを見せたいとか、アートを描いている姿をみせたいなど、見た目のよさばかりにとらわれて、隠しておきたい冷蔵庫が客席を向いているとか、肝心の導線が悪いといった事態を招かないように注意しましょう。

6、設備/什器・備品

画像素材:写真AC

ここでも、最初の事業計画が非常に重要になります。まずは、エスプレッソをメニューに入れるかいれないのか、開業後に気が変わってマシンを入れたいと思ったけど、設置スペースがなく、家庭用のものしか入れることができなかった……これはNG。コーヒースタンドでエスプレッソを提供するなら、プロ用の2連式以上のマシンは必須。また、店の規模、売上げをきちんと計算したうえで、余裕をもった設備を導入することが必要です。

画像素材:写真AC

たとえば1日何杯のラテを売らなければならないのかによって、ストックするミルクの数と冷蔵庫の大きさは変わってきます。細かいことを言えば、牛乳の配達が何日ごとなのかによっても、必要な冷蔵庫の容量は違ってくるでしょう。

よくあるのは、製氷機のサイズを見極めきれず、氷が足りなくなって夏場にアイスメニューを満足に出せないという話。マシンやグラインダー同様、製氷機などの大型で高価な機器も、あとから追加導入するのが難しいもの。反対にカップや、備品のロゴ入れなど、あとから付け足せるものはどうにでもなるので、メインの設備については最初にしっかり検討を重ねましょう。

7、メニュー構成

画像素材:写真AC

お客のニーズや期待を無視して自分が出したいメニューだけを置くというのは、失敗するコーヒースタンドの典型的なパターン。たとえば富裕層の年配客が多いエリアに、浅煎りのエスプレッソだけを置いてもお客はこないでしょう。彼らが求めているのは、丁寧に淹れた深煎りのドリップコーヒー。

とはいえ、自分のコンセプトを無視して売れるメニューだけを置くというのも間違いです。たとえ損することがあっても「自分の店の軸はスペシャルティコーヒーなのだ」ということであれば、それは置くべきメニューです。売れないものを置き続ける、それもオーナーに必要な勇気。メニュー構成はバランスが大事なので、売れ筋とそうでないものがあってもよいでしょう。

画像素材:写真AC

豆の仕入れについて考えるべきは、いかにしてロス率を減らすかということ。基本、バルブ付きのアルミパックに梱包されたコーヒーであれば、開封さえしなければ半年は持つでしょう。自分で味をとれないバリスタは、「1ヵ月で味が落ちますよ」とロースターに言われるままに廃棄してしまうことも。本当にダメなのかどうかは、自分の舌で判断するべき。バリスタとして必要最低限のスキルを磨くことも忘れないようにしましょう。

8、宣伝・販促

画像素材:写真AC

Facebook、Twitter、Instagram……など、今は昔と違っていろいろな宣伝ツールがあります。ただ、SNSやブログでつながっている人たちは言われなくても店に来てくれるでしょう。若干の新規客を誘導する手段になったとしてもその人たちが固定客になるとは限らないし、これらのツールに期待しすぎるのもよくないです。販促ツールとしての割引チケットやスタンプの配布も、自分の店を支持してくれるお客が望んでいるのであれば行ってもよいでしょう。ただ、世俗的なコーヒースタンドではなく、“隠れ家的な名店”といったイメージや満足感をお客に与えたいのであればこれらの手段は使わないほうが賢明。

画像素材:写真AC

また、ある程度の店舗規模がないと難しいかもしれませんが、店をイベントスーペースとして提供するのは宣伝・販促の方法として有効な手段。たとえば地元のアーティストを呼び、楽器演奏の場やギャラリーとして貸し出し、その際にはワンドリンク制を設けましょう。コーヒーの味を知ってもらうきっかけになるほか、店全体のイメージアップにもつながるでしょう。

コーヒースタンドは比較的少ない投資で開業できる!

開業するのに比較的少ない投資で済むのがコーヒースタンドのメリット。抽出器具さえあれば、5坪程度の小規模店舗でも開業ができます。おいしいコーヒーを届ける拠点としてのコーヒースタンドは有望なビジネスチャンス。開業を考える人に役立つヒントになったのなら幸いです。
監修/㈲FBCインターナショナル 代表取締役 上野 登

※画像はイメージです
※「COFFEE STAND コーヒースタンド ー開業と経営、スタイルとノウハウー」に掲載した内容を再編集しています