『評判の担々麺』をプロがチェック!専門書を読みながら担々麺の”今”と”未来”を考える

2022年5月に旭屋出版から刊行された『評判の担々麺』。人気の高い担々麺だけを特集した記事で、計34の人気店と専門店を集め、味作りのポイントや調理技術などを解説した専門書です。 

そこで、今回掲載した『175°DENO担担麺』の社長・出野さんにプロ目線でチェックしてもらい、これから担々麺作りをする人へのアドバイスを語ってもらいました!そして、最新の担々麺事情と今後の担々麺の方向性についても同時に語ってもらいましたよ。

『175°DENO担担麺』とは?

本では4ページに渡って『175°DENO担担麺』さんを特集

『175°DENO担担麺』さんは、札幌で開業し、今は東京を始め、江別や福島、仙台などに店舗を拡大する人気店です。出野さんはラー油を手作りする職人と出会い、「辛いけど旨味のあるラー油を多くの人に広めたい」とラー油をメインにしたお店を創業することを決意。

お店のこだわりはなんといっても、出野さんが半年に一回ほど中国・四川省に出向き、わざわざ購入するという花椒(ホワジャオ)。この花椒で作り上げたラー油がたっぷりかかった「担担麺(汁なし)」は店の一番人気!今では、カップ麺や冷凍麺にもなるほどに定着しました。

ちなみに、お店の詳細は別記事で詳しく紹介しているので、気になったらチェックを!

理想の担々麺を作り上げるためには「経験」と「研究」が必要

「昔、修行した店や知り合いの店がたくさん載っている」と語る出野さん

まずは、本を軽く読んでもらいました。

「この本、僕がかつて修行した店や知り合いの店など、担々麺の専門店がたくさん載っていてスゴイですね(笑)。感想としては非常にマニアックな本だなと思いました。

僕はさまざまな店で学びながら、研究を繰り返して、自分の「理想の味」を作り出したんです。多くの店で修行した結果、名店の担々麺のレシピはたくさん知っています。それを組み合わせ上に、四川の花椒も現地で研究して、ようやくたどり着いたのが、現在の「担担麺(汁なし)」。特に担々麺は個性の出にくい商品ではあるので、自分の味を磨くのなら、いろいろなお店の味とアイデアを学ぶのは大事だと思います。」

四川産の花椒を3種類味わえる「花椒三種盛り」があるのも花椒にこだわる出野さんならではのメニュー

確かに、出野さんが開業したころは、本格四川系の汁なし担々麺の黎明期。花椒も日本でもまだまだ一般的ではなく、わざわざ現地で研究を重ね、40種類の中から厳選したものを使用しました。

「花椒は特にこだわって選んでいますね。四川大学が発行している花椒専の種類や製法を解説する本があって、それを翻訳して学び、知識を深めていきました。特に汁なしにおいて重視しているのは、香りとしびれなので、花椒一つで全く変わってしまうのも担々麺の特徴です。」

違いが出にくい商品であるからこそ、花椒の香りとしびれにも違いにも注目すると、より知識が深まるということですね。

ラーメン屋が担々麺を始める時に難しいのは「ラー油」と「カエシ」作り

担々麺をメニューとして初めて作る時には何が問題か?ポイントを語ってもらいました

『評判の担々麺』はラーメン店が担々麺メニューを導入する際にも参考にしてほしいのですが、次に初めて担々麺メニューを開発するラーメン店においては、どのような点を気をつければいいか聞いてみました。

「まず、担々麺は、ラーメンの味わいとは違う点が、醤油とごま、酢だけでカエシの構成が80%完成するという独特な商品。残り20%がだしの効いたスープとなっていて、カエシの味わいでほぼ決まるものだと思っています。担々麺メニューを初めて作るのなら、ハードルとなるのは、ラー油とカエシだと思います。

『175°DENO担担麺』さんでは、ゴマダレに合わせるスープは、あっさり風味の清湯スープと濃厚な白湯スープが選べるというシステム

「しかし、ラーメン店では担々麺を出すとなると、ごまの「苦味」を取り除く方法を知らない人も多く、そこでつまずく人もいるようです。自家製ラー油は作ろうと思えば、簡単に作れるものではあるのですが、「美味しく作る」ことが難しいんです。そして、ごまダレとの相性もあって、ウチの汁なし担々麺に他社のラー油を入れて見たら全然合わないんですよ(笑)。シンプルではあるものの、ラー油との相性も踏まえて開発しないといけない商品でもありますね。」

なるほど…シンプルではあるものの、組み合わせが非常に奥深いのが担々麺なんですね。

味と香りの決め手である「ラー油」作りのノウハウはまだまだ日本では確立していない?

『評判の担々麺』に記載されている自店舗を見ながら日本と中国のラー油事情を語ってもらいました

コロナ禍前は、半年に一度は中国・四川省を訪れていたという出野さん。本場四川の担々麺事情と日本との違いについてはどうなんでしょうか。

「実は本場四川では、(汁なし)担々麺は古典グルメになりつつあるんです。現地ではまだ屋台で売られているくらいで、日本のように若者が食べるものではないかなぁと。とはいえ、中国人なら誰もがその存在を知る定番メニューです。現地では、担々麺を発展させた宜賓燃麺のほうが人気だったりしますね(笑)。

「僕としてはラー油は最後にかけることを絶対におすすめします」と出野さん

「ラー油に関しても四川では「家庭の味」となっていて、スーパーマーケットでも「自家製ラー油キット」が売られているほど、家庭でもよく作られています。カレーのようにそれぞれの家庭の味があって、辛いものから甘いものまで、さまざまな味わいがあるというのも面白いですね。

それに比べ、日本人はラー油を家庭で作ることはほぼしないですよね。よって、自家製の「美味しい」ラー油を作るとなると、どう作っていいか分からないところも多い。日本ではまだまだラー油の作り方がそれほど普及していない気もします。」

これは本場の事情を知る出野さんらしい視点ですね。四川ではラー油は各家庭で磨かれた調味料あるのに対して、これだけ担々麺の店が増えているものの、味の決め手であるラー油作りのノウハウがラーメン屋でもまだまだ確立されていないというのも、また事実ですね。

担々麺は世界でも勝負できる味?今後はオリジナル担々麺がたくさん登場予定!

「担々麺は海外でもウケる味ですよ!」と語る出野さん

『175°DENO担担麺』さんは札幌から東京へ進出して店舗も拡大中ですが、今後の担々麺はどのように拡大していくか、そして、どんなオリジナル担々麺を考えているか、聞いてみました。

「海外に進出しているラーメン店から話を聞くと、通常のメニューと「スパイシー」なメニューとして担々麺が選ばれる傾向にあるようです。それがどの店でも売上2位になるくらいだから、辛口の麺メニューは重要があると思います。そして、ヨーロッパでは担々麺をメインにして成功している店もあるとも聞きます。知り合いから担々麺だけでも勝負できるよ、とは言われるほどですね。

こちらは人気メニューの「タンタンメン一七五°郎(いなごろう)」。ボリュームたっぷりではありますが、担々麺のごまとラー油の香りが加わった、満足度の高い一品。

「当店で考案した、G系と担々麺を合わせた「タンタンメン一七五°郎(いなごろう)」は、店舗によっては売上の3〜4割になるほど、オリジナルメニューとして成功した実感はあります。これは担々麺の可能性を広げたメニューでもありますね。今後は「担々麺×ジャンル」といった商品を考えていて、豚骨や家系との組み合わせも登場する予定です!楽しみにしててください。」

なんと、G系以外にも、新しいジャンルの担々麺が登場する予定とのこと。今後も今までにない新しい担々麺が食べられると思うとワクワクしますね。

今後の「担々麺」はラーメン麺料理という枠を越えて広がる!

写真提供:日糧製パン

最後に今後の担々麺市場について、コメントをいただきました。

「担々麺の市場は着実に広がっていると思います。冷凍ラーメンの売上1位が担々麺になったり、カップラーメンのランキングだと担々麺が3位になったというデータもあって、一般の消費者の興味がさらに担々麺に向いてきたなぁと実感しています。

そして、もっと面白いのが担々麺が「麺」というカテゴリーだけに収まらなくなってきたのも特徴ですね。「担々麺×パン」ということで、地元北海道の『日糧製パン』社とコラボして、「175°DENO担担麺風ロール」や「ラブラブサンド175°DENO担担麺風」などを商品化しました。今後は鍋用の担々スープや担々ドレッシングも商品化する予定です!」

なんと!担々麺はもはや「麺」という領域を越えて普及しつつあるんですね。今後の『175°DENO担担麺』さんの新商品はもちろん、関連商品にも注目です。