「無価値」からはじまる美食 廃棄素材の再発見【持続可能なガストロノミー②】

常に新しい食体験の提供を追求してきた、「ル・スプートニク」の髙橋雄二郎シェフ。持続可能性と向き合うなかで彼がたどり着いたのは、素材探しの「方向転換」でした。これまで見過ごされてきたものに新たな価値を見出す、その挑戦をふれんちハンターが紹介いたします。
希少な素材から、見過ごされてきた素材へ
食材を余さず使い切ることをよしとするフランス料理は、もともとフードロスが少ない料理です。リスペクトしている生産者から産地直送で素材を届けてもらい、その素材を大切に使い切ることも、髙橋シェフにとっては、ごく当たり前の日常でした。だからこそ、「持続可能性のために、これ以上何をすればいいのか」と、長らく思い悩んできたといいます。
その葛藤を打破する転機となったのが、食材探しの方向転換でした。自身のライフワークである「未知なる素材の探究」。これまでは希少価値の高いものや、まだ誰も使っていない新しい食材へと向けられていた好奇心を、あえて逆の方向へと向けたのです。
一般的には価値がないと思われているものや、廃棄されてしまうものに光を当てる。そこに食材としての可能性を見出せれば、ガストロノミックなレストランらしい新しい食体験の開拓とフードロス削減を同時に実現できるはず。それがシェフの導き出した答えでした。

「産業廃棄物」が味の決め手に

そのアプローチを象徴するのが、醤油かすと経産牛を組み合わせた一皿です。
醤油の製造過程でもろみを搾る際に生じる「醤油かす」は、その多くが産業廃棄物として処分されています。髙橋シェフは、これをごく少量の日本酒で伸ばして牛肉を包み、数時間マリネして塩味とうま味を浸透させたのち、オーブンで一緒に焼き上げます。肉の表面を保護しながら、焦げた醤油かすの香ばしさと、ほのかな発酵香を肉に移す技法です。醤油そのもので漬け込むよりも、複雑で奥行きのある風味が生まれるといいます。

合わせたのは、宮崎県「鏡山牧場」で自然放牧された黒毛和牛の経産牛。出産を経験した母牛は、かつては「固くて食味が劣る」と敬遠されてきました。しかし、再肥育によって肉質は向上し、現在では独特の濃厚なうま味をもつ魅力的な食材として、多くのシェフから注目されています。
そこに、マッシュルームを発酵させたソースの酸味や、野菜の端材から作った炭パウダーの苦味を添え、力強い肉の味わいをいっそう引き立てました。
産業廃棄物も、かつては敬遠された経産牛も、眼差しひとつで価値ある食材へと変貌する。世間がつけた「無価値」というレッテルを覆すのは、料理人のアイデアと技術です。

【参考図書】
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★食品ロスを減らす ★持続可能性に配慮した野菜、魚介、肉類の活用 ★プラントベース食材を活用したメニューなどなど、 ■A4変・128ページ |
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