格子の焼き色が生む、燻香とコントラスト 牛フィレ肉のグリエ【肉の火入れ技術⑧】

「グリエ」は、溝のついた鉄板「グリヤード」を使った火入れ技術です。もともとは網焼きを意味するフランス語で、バーベキューもグリエの一種。横浜にある「レストラン ストラスヴァリウス」の小山英勝シェフは、「グリエはもっともシンプルで原始的な調理法でありながら、グリエにしか作れないおいしさがある」と語ります。素材の力強さを引き出す小山シェフのグリエ技術を、ふれんちハンターが詳しく解説いたします。
グリヤードでこそ表現できる力強さ
小山シェフがかつて料理長を務めていたパンパシフィックホテル横浜の「クイーン・アリス」には、調理場に巨大なグリヤードが設置されており、肉はすべてそのグリヤードで焼いていました。100人前の注文が同時に入る大規模なパーティーでも、オーブンに入れるロティとは異なり、目の前で肉の焼き具合を見張っておけるので失敗がなく、全員に焼き立てのおいしさを提供できるのが魅力だったそうです。
独立して自身の店を構えた現在も、小山シェフは肉の調理にグリエをよく活用します。グリヤードには凹凸があるため、焼き加減に強弱が生まれ、焦げた部分の香ばしさと食感がよいアクセントになります。さらに、熱したグリヤードで焼きつけたときに煙が上がり、肉はほのかに燻香をまといます。この香りと食感が、フライパン調理とは異なる力強さを生み出すのです。

グリエの力強いおいしさは、牛肉や鹿肉のような赤身肉でこそ真価を発揮します。組み合わせるソースも、赤ワインが進みそうな濃厚な味のものがよく合います。逆に繊細な風味を生かしたい仔牛肉や豚肉はグリエには不向きで、こちらはポワレのほうが適しています。

強火で格子模様を刻み、余熱で仕上げる
和牛のフィレ肉は、サシが入っているので焼いても固くなりづらく、グリヤードで余分な脂も落とせるため、グリエにはうってつけの素材です。
ミディアムからミディアムレアに仕上げたいので、15分ほど室温に戻してから使います。グリヤードはあらかじめ強火にかけてよく熱しておきます。肉をのせるときの温度は、湿らせた布巾でさっと表面を拭くと軽く煙が上がる程度が目安。2㎝ほどの厚みがある肉は、先に周りから焼きはじめると肉の反り返りを抑えられます。
周りを焼いたら上面を1分ほど焼き、きれいな焦げ目がついたら肉を90度回して格子状に焼き色をつけます。この美しい格子模様こそがグリエの醍醐味。1人前ずつていねいに焼き上げることで、その魅力を最大限に引き出すことができます。
裏返して同様に1分ほど焼いたら、バットに移して140℃のコンベクションオーブンへ。低温でじっくり温めるように中心に火を入れていきます。加熱時間は、ミディアムレアで4分、ミディアムで4分半〜5分程度です。


焼き上がったら、ディッシュウォーマーの中で4〜5分休ませます。庫内の温度は45℃程度。休ませる工程を経ることで、肉汁が肉の中に落ち着き、切ったときに溢れ出すことなく、ジューシーに仕上がります。

【参考図書】
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フランス料理の基礎技術の中から「肉の火入れ」に特化し、30年以上の経験を持つベテランのフレンチシェフ5名に、ロティ、ポワレなど古典的な調理法を素材ごとに詳しく解説。 ■A4・112ページ |
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