「FARO」浜本拓晃シェフが挑む ヴィーガンのパイ包み焼き【パイ包み焼き⑥】

日本におけるヴィーガン・ガストロノミーの先駆者として知られるイタリア料理店「FARO」。
2023年にシェフに就任した浜本拓晃さんが手がけるのが、ヴィーガンバターの折り込みパイ生地と大豆ミートを使ったパイ包み焼きです。フランスの古典料理に、イタリア料理とヴィーガン調理のノウハウを融合させた一皿をふれんちハンターがご紹介します。
驚きと満足感を届けるために
日本ではまだヴィーガン料理が一般化しておらず、FAROに訪れる客の多くがヴィーガン料理をはじめて食べる人たちです。そんな彼らに驚きと満足感を届けたいという想いから、浜本シェフが選んだのが、華やかさと食べ応えを兼ね備えたパイ包み焼きでした。
イタリア料理一筋だった浜本シェフにとって、パイ包み焼きはゼロからの挑戦。フランス料理の名店を食べ歩いて本物の味を舌に刻み込み、その味をヴィーガン料理に落とし込むべく、ヴィーガンバターを使いながら、イタリアとフランスを融合させる独自の味づくりに没頭しました。
ヴィーガンバターの軽やかな折り込み生地
浜本シェフが生地に使うのは、アーモンドを配合したヴィーガンバターです。一般的なヴィーガンバターは、ココナッツ特有の甘い香りがありますが、このタイプには余計な香りがなく、アーモンドの香ばしさがほどよく感じられるため、料理に合わせやすいといいます。
ヴィーガンバターは通常のバターより融点が低く、折り込むさいに割れやすいのが難点。そこで、配合と作業時の温度を調整し、さらに、冷水のかわりに炭酸水を使用して膨らみをよくすることで、ヴィーガンバターの風味に合う、サクサクと軽やかな食感に仕立てています。


力強い野菜の味を凝縮させたフィリング
ボロネーゼをヴィーガンにアレンジしたフィリングは、大豆ミート、炒めた野菜、トマトソース、乾燥させた茸類を一緒に煮込んで作ります。濃厚な出汁が出る茸とトマトの相乗効果で深い味わいを引き出していますが、それ以上に重要なのが野菜の品質です。動物性食材に頼れないヴィーガン料理は、野菜そのものが持つ力が料理の味を決定づけます。浜本シェフは、有機栽培や無農薬栽培を育てる生産者のもとに足を運び、対話を重ねながら濃厚で力強い野菜を産地直送で仕入れています。
パイ包み焼きに添えたのは、ビーツのジュースをベースに、野菜の端材を煮出した「サスティナビリティ・ソース」。前エクゼクティブシェフ・能田耕太郎氏から受け継いだこのソースは、野菜の旨味と栄養が詰まった甘酸っぱくてコクのある複雑な味わいが魅力です。


おいしさと驚きを届けるだけでなく、食材の廃棄を減らし、身体にも地球にも優しい料理を目指す浜本シェフ。このパイ包み焼きには、地球環境への配慮と持続可能な未来への願いも込められています。
【参考図書】
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伝統の味から革新の新作まで 本書では、老舗フレンチのスペシャリテから、気鋭シェフの最新作まで、パイ包み焼きのバリエーションを紹介。冷前菜・温前菜、魚料理、肉料理、デサートと、ジャンル別に、各店のパイ包み焼きの工夫、技術を解説します。 ■A4・128ページ |
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