深海魚って食べられるの!?鹿児島の海で獲れる「うんまか深海魚」をフードマニア編集部がご紹介!

「深海魚を食べる」と言うと、どこか異質な印象を受ける方も多いでしょう。しかし、実は西京焼きで親しまれる「銀ダラ」や、高級魚として知られる「金目鯛」「のどぐろ」もれっきとした深海魚だとご存知でしたか?そしてSDGsが叫ばれている現在、その深海魚が注目されているんですよ!

この記事ではフードマニア編集部が、鹿児島の海で獲れる実は美味しい深海魚「うんまか深海魚」を解説していきます!

そもそも深海魚とは?

画像提供:鹿児島大学水産学部 大富 潤教授

深海魚とはその名の通り、深海に生息する魚介類の総称。私たちが普段食べている魚の多くは浅海で獲れるものですが、深海魚は主に水深200m以上の深海域にすむものを指し、日本では静岡県の沼津市が深海魚の一大漁場として有名です。

しかし、日本の太平洋側には沼津以外にも深海魚の宝庫とも言える漁場があります。それが今回ご紹介する鹿児島の海。内湾にして深海を有する日本で唯一の海・鹿児島湾と、薩摩半島沖は、数多くの深海魚に恵まれた、まさに「西の深海魚王国」とも呼べる場所です。

画像提供:かごしま深海魚研究会

まだ深海魚を食べる習慣は根付いていませんが、鹿児島の海で獲れる「実は美味しい深海魚」を「うんまか深海魚」と称して、現在一般に流通させる取り組みが行われています。
サンマなどの不漁が続く現在、深海魚は新たな美味しい魚として注目が集まっているんですよ。

実は美味しい!鹿児島の海で獲れる深海魚12選!

ヒメアマエビ

画像提供:鹿児島大学水産学部 大富 潤教授

鹿児島湾で多く水揚げされるエビの一つで、「とんとこ網漁」と呼ばれる方法で獲られます。とんとこ網漁とは、船尾から1600mにもなるロープを伸ばし、海底の魚介類を網で引き上げる漁のこと。ヒメアマエビは、かつて網にかかっても多くはそのまま海上投棄されていましたが、その美味しさが認められ、「うんまか深海魚」を代表する存在になりました。

画像提供:鹿児島大学水産学部 大富 潤教授

小ぶりですが、唐揚げや素揚げ、焼きエビにすればコクと、殻の香ばしい香りが楽しめます。また生の状態で刺身や握りにして食べるのもおすすめ!鹿児島県内にはこのヒメアマエビをふんだんに使用したせんべいを販売しているお店もあるんですよ。

キホウボウ

画像提供:鹿児島大学水産学部 大富 潤教授

口の先端がまるでフォークのように尖っているのが特徴的なキホウボウ。硬い骨板に覆われていて、少し奇妙な見た目です。
しかしそんな見た目に反して上品な味わいが魅力で、刺身にすればほんのりと甘く、清らかな旨味を感じます。素揚げや唐揚げが定番で、カリッと香ばしい風味が楽しめますが、焼くと骨板が蓋代わりになってぷりっと蒸し焼きのように仕上がります。

アイアナゴ

画像提供:鹿児島大学水産学部 大富 潤教授

深海底のギャングとも呼ばれるアイアナゴ。そのひょうきんな顔からは想像もできないほど、鋭い歯を持つ肉食魚なんです!
しかしその身は柔らかく甘みがあり、煮穴子や天ぷら、握り寿司にぴったり!

キュウシュウヒゲ

画像提供:鹿児島大学水産学部 大富 潤教授

口が少し尖っていて、スリムな見た目が特徴的。鹿児島では徐々に流通するようになった深海魚で、刺身や揚げ物、焼き魚、干物などさまざまな料理に適しています。
中骨がやわらかいため、揚げ物にするとそのまま食べられるのが魅力。また、背ごし(柔らかい骨ごと食べる刺身)にしても美味しくいただけます。

マルヒウチダイ

画像提供:鹿児島大学水産学部 大富 潤教授

丸みを帯びた形が特徴的なマルヒウチダイ。一般には出回っていない珍魚ですが、旨味の強さと脂の乗りが大変素晴らしく、握りや刺身、干物や唐揚げなどで食べると最高です。
沼津ではこの仲間が高級魚として知られていて、鹿児島でも今後流通が期待されている魚なんですよ!

カゴシマニギス

画像提供:鹿児島大学水産学部 大富 潤教授

15センチほどの小ぶりなサイズで、大きな目が印象的な魚。鹿児島の海で発見されたことから、その名前がつけられました。
ニギスという魚の近縁種ですが、カゴシマニギスはより肉厚でふっくらとしているのが特徴。味が良いので、天ぷらや唐揚げ、刺身として食べるのにもぴったりです。中骨も柔らかいので、揚げた場合そのまま食べることができます。

スミクイウオ

画像提供:鹿児島大学水産学部 大富 潤教授

まるで墨を食べたかのように、口の中や腹が黒い深海魚。見た目の悪さから敬遠されがちですが、脂の乗りがとても良いため、刺身や焼き魚にぴったりです。また、干物にすることでさらに凝縮された旨味を楽しめますよ!

ハマダイ

画像提供:鹿児島大学水産学部 大富 潤教授

鹿児島では「ちびき」、関東では「おなが」の別名を持つ、赤いからだと長い尾びれが特徴的な魚。「うんまか深海魚」のキャラクターにも採用されているシンボル的な存在で、高級魚の一つです。
旨味と甘みが優れていて、寝かせて熟成させると大変美味。定番は刺身で、その脂の旨さを存分に味わうことができます。

ボウズコンニャク

画像提供:鹿児島大学水産学部 大富 潤教授

名前の由来は「役に立たない」ことから。黒いからだと漁獲量の少なさから棄てられることが多かった魚ですが、実は高級魚である「のどぐろ」にも引けを取らない脂乗りなんですよ!身質も良く、しっかりとした歯触りが魅力です。
食べ方は「のどぐろ」と一緒で、炙りや焼き物、煮物との相性が抜群。上質な脂がとろっと口の中で溶ける感覚は堪りません!

ナミクダヒゲエビ

画像提供:鹿児島大学水産学部 大富 潤教授

ヒメアマエビと同様に、とんとこ網漁で獲れるエビ。ナミクダヒゲエビを専門にとる漁師は世界中で鹿児島湾だけだと言われていて、甘みの強さとコクが魅力です。
流通量が少なく高値で取引されていますが、「幻のエビ」として鹿児島では名物になっています。

アオダイ

画像提供:鹿児島大学水産学部 大富 潤教授

ハマダイと同様に、深い海に生息するフエダイの仲間。体が青いのでアオダイですが、鹿児島では「ほた」、奄美群島では「うんぎゃるまつ」という名前で親しまれています。
甘みも歯触りも申し分ない上質の白身です。

ムツ

画像提供:鹿児島大学水産学部 大富 潤教授

子どもの頃は浅い場所にいるので定置網などで獲れますが、成長にともなって深海へと移動します。大きいものは全長1mを超えます。「くろむつ」と呼ばれることが多いですが、標準和名クロムツという別種がいます。
ほんのりピンク色の白身は絶品です。脂ののりが良く、刺身のほか、煮ても焼いても蒸しても美味しいです。

「うんまか深海魚」を堪能してみよう!

画像提供:鹿児島大学水産学部 大富 潤教授

最近、「海水温の上昇などで不漁が続いている」といったニュースをよく耳にします。しかし実はもっと広く目を向ければ、深海にも美味しい魚はたくさん存在します。「深海魚」という言葉だけで回れ右してしまうのではなく、ぜひ一度その味を確かめてみては?意外な美味しさにハマってしまうかもしれませんよ!

協力:かごしま深海魚研究会