バターの特性を生かしきる 舌平目のムニエル【魚介の火入れ技術③】

頭つきの舌平目を丸ごとムニエルにし、客席で取り分ける贅沢な一皿は、東京會舘「レストラン プルニエ」の名物料理。松本浩之シェフは、澄ましバターと泡立つバターを使い分け、香り高くしっとりと焼き上げます。その技術を、ふれんちハンターが詳しく解説いたします。
■見た目は伝統、火入れは進化
日本初の魚介専門フランス料理店として、1934年に誕生したプルニエ。そこで世代を超えて愛されてきた名物のひとつが、舌平目を丸ごと調理したダイナミックなムニエルです。松本シェフは「高いデクパージュ技術を持ったサービススタッフが在籍するプルニエだからこそ提供可能な料理」だと笑顔で語ります。


現在、店で提供しているムニエルは、見た目こそクラシカルですが、火入れは松本シェフがフランス・コルシカ島での修業で学んだ技法を独自に進化させたものです。
薄力粉をまぶした舌平目に、澄ましバターとオリーブオイルを何度もまわしかけ、じっくりと火を入れてから、最後にバターを加えて香りづけます。
不純物を取り除いた澄ましバターは、通常のバターに比べて発煙点(加熱したさいに煙が出始める温度のこと)が高くて焦げづらいため、身にバターの風味をふくませながら、時間をかけて火入れできるのが魅力だといいます。

■内側まで粉をまぶして水分流出を防ぐ
薄力粉は、表面だけでなく、内臓を抜いた内側や、エラの部分にも揉み込むようにしっかりまぶします。水分は内側から出てきやすいので、小麦粉の膜をくまなく張り、水分の流出を防ぐのが目的です。
焼くときもエラの中や腹の内側にまで油を十分に入れ込み、内部を焼き固めておきます。余計な水分が出ると身がパサつくだけでなく、フライパンが汚れ、その汚れが身について焦げつきや焼きむらの原因になるからです。

■蒸し焼き状態を作る、泡立つバター
はじめは中強火で、スプーンで油をまわしかけながら表面に焼き色をつけ、全体に9割ほど火が入ったところで、角切りのバターを加えます。このとき、ごく弱火に落とし、バターが泡立った状態を維持しながら火を入れるのが最大のポイントです。
泡立っているうちはバターに水分が含まれているため、バター自体の温度が低く、蒸し焼き状態になって身がふっくらしっとりと仕上がります。バターがノワゼット色になった時にちょうど身に火が入るのが、ベストなタイミングです。

焼き上げたらトレーに移し、熱いうちにソースをかけます。一般的には、ソースを仕上げるさいにバターを溶かし込むことが多いですが、この料理では、ソースにはバターを加えず、ソースの上から熱々の焦がしバターをかけて仕上げます。
ソースとバターを乳化させず、あえて別にかけることで、焦がしバターの香ばしい風味が引き立ち、ソース自体の油脂分が減って、後味がすっきりと軽くなるのです。

【参考図書】
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繊細な技術である「魚介類の火入れ」に焦点を当て、フランス料理の基本となるポワレ、 ■A4変・112ページ |
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