日本人の嗜好が育んだ 金目鯛のポワレ【魚介の火入れ技術②】

フライパンでじっくりと焼き上げるポワレは、魚料理の中でも特に人気が高い調理法です。皮はカリカリ、身はふっくらジューシー。東京・西荻窪にある「ビストロ サン ル スー」の金子淑光シェフは、臭みを徹底的に取り除き、クリアで香り高いポワレを焼き上げています。その技術を、ふれんちハンターが詳しく解説いたします。

■ポワレを定番化させた、日本人のカリカリ愛

「当店の魚料理でいちばん人気は、パリッと皮を焼いたポワレです」と金子シェフ。

客から支持を得るポワレは、魚とソースの組み合わせで無数のバリエーションが楽しめ、どんな魚種にも応用が利く万能な調理法だといいます。

現在は多くのレストランで提供されている定番の調理法ですが、金子シェフがフランス料理の世界に入った1980年代には、魚料理はムニエル、ソテー、ヴァプール、グラタンが主流でした。ポワレはまだ少なく、皮のカリカリ感は特に重視されていなかったといいます。フランス料理が日本で普及するにつれて、皮の食感にこだわる日本人的な嗜好が、作る側にも食べる側にも浸透していったのかもしれません。

ほとんどの魚に使える調理法ですが、あえていえば、アンコウのように皮なしのむき身で使う魚や、メジナのように皮が厚くて臭みの強い魚種には不向きです。皮が薄い魚の場合は、粉を軽くふるとカリッと焼き上がります。

■臭みを徹底的に取り除く

魚料理の成否を分けるのが、臭みの処理です。金子シェフは魚に塩とこしょうをしてから10分置き、出てきた水分をペーパータオルでていねいに拭き取ります。この水分には臭みが含まれているため、この一手間が仕上がりを大きく左右します。

さらに、ポワレ中の油にも魚の臭みが移ります。金子シェフは調理の途中で油を捨てて新しい油に取り替える作業を2、3回繰り返します。手間はかかりますが、こうすることで臭みがさらに抑えられ、クリアな味わいに仕上がります。最後にバターを加えて香りを魚にまとわせれば、香ばしく風味豊かなポワレの完成です。

■蓄熱性の高いフライパンで身をジューシーに

金子シェフがポワレで使用するのは、フランス・モヴィエル社製のステンレスフライパン。フッ素樹脂加工は引っつかず便利ですが、焼いたときに嫌な臭いを感じるため使わないといいます。

ステンレス製フライパンの最大の利点は、蓄熱性の高さです。皮側をしっかり焼き上げた時点で火を止め、ひっくり返した後は余熱だけで身側を加熱します。この方法なら、火の入れすぎでパサつくことなく、皮はカリカリ、身はふっくらジューシーな理想的な状態に焼き上げられます。

合わせるソースは、その日の気分や季節によってさまざまです。ブール・ブランをベースに、アルコールや香草、スパイス、海藻などでバリエーションを広げることもあれば、今回のようにフュメ・ド・ポワソンと生クリームをたっぷり使った古典的なソース・ヴァン・ブランで仕上げることもあります。皮はカリカリ、身はふっくら。完璧に焼き上げたポワレだからこそ、どんなソースとも見事に調和するのです。


【参考図書】

古典技法を追求!
フランス料理 魚介の火入れ技術


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■A4変・112ページ
■ISBN-13:9784751115381
■4,950円(税込)