人気の冷やし中華の今と昔を比べよう!神保町『揚子江菜館』の五色涼拌麺
明治39年(1906年)創業の老舗中華店『揚子江菜館』は冷やし中華で有名な名店。看板メニューである、富士山のように盛られた五色涼拌麺は、なんと90年近くも販売されている歴史深い一品なんです。
時代を超えて愛される看板メニューはどのように変化してきたのでしょうか?この記事では1996年に旭屋出版から刊行された「名店の看板メニュー」を見ながら、当時の冷やし中華と現在の冷やし中華を比べてご紹介。
『揚子江菜感』の名物・五色涼拌麺の歴史
明治39年、東京・西神田で創業した『揚子江菜館』は、後に店舗を神保町に移し、現在でも名店として知られます。昭和8年(1933年)、二代目オーナーが考案した元祖冷やし中華「五色涼拌麺」は、一年を通じて人気のメニュー。
今でこそ、夏の風物詩的な存在である冷やし中華ですが、それ以前には日本に存在しなかったのです。もちろん本場中国にもない料理。五色涼拌麺は、味や盛り付け、彩りの美しさからも日本人の趣向に合った一品といえますね。当時は冷蔵庫もなく、実際にキンキンに冷やしたわけではなかったのですが、「冷やし中華」という言葉の持つイメージから人気商品に。
そんな五色涼拌麺をフードマニアを運営する旭屋出版が刊行する「近代食堂」でもご紹介。その中で「名店の看板メニューと思想」というコーナーでは、当時の人気店の看板メニューを取材し、連載していました。こちらの「名店の看板メニュー」という本はその連載を1冊にまとめたもの。今回はこちらに掲載された1996年版の五色涼拌麺と現在の五色涼拌麺を比べてみましょう。
過去と現在の冷やし中華と比較してみよう!
それでは、1996年版の五色涼拌麺から見てみましょう。まずは飾り付け。当時の神保町の高層階からは富士山が見えたことから、形状は富士山を、そして彩りは四季をモチーフにしたとのこと。麺を山状に盛り付け、キュウリやチャーシュー、糸寒天、筍、錦糸玉子、絹サヤ、椎茸、エビ、うずら卵、肉団子の10種の具材を使い、豪華に盛り付けるのが五色涼拌麺の基本。錦糸玉子を上にのせ、雲がかかった富士山をイメージしています。
この麺に絡めるのが甘酢タレ。200回以上の試作を経て、日本人好みの味に仕上げたとのこと。食べた時のひと口目のインパクトがあり、口に入れた瞬間、甘みを感じますが、次第にサッパリとした爽快感を感じることができるのが特徴です。そもそもタレがこれだけ甘いのは、砂糖が貴重だった時代の名残。
次に現在の五色涼拌麺を見てましょう。実は発売以来、トッピングのラインナップは変わらないのです!
変わった点といえば、トッピングの配置。当時はエビなどの具材をすべて山の上にのせていたのですが、これだと「(雲がかかった)富士山には見えない」というお客の意見があったので上にのせる具材は錦糸玉子だけにしたとのこと。形状は段々と変化していますが、平成の段階で現在の形状と同じものになりました。
そして、原価と手間を掛けることも開発当時のまま。例えばキュウリ。季節によって味に微妙な変化があるため、そのときどきで産地を変え、水分が多く、苦味の少ないものを選んでいるとのこと。その他の具材もすべて自家製。チャーシューは細く切っても崩れにくく、脂肪の少ない外モモにこだわっています。肉団子も自店で挽いた豚肉を使用。うずら卵やエビも冷凍ものではなく、殻付きを茹でるというこだわり。
また、キュウリ、チャーシュー、糸寒天、筍、錦糸玉子はすべて一口サイズの7cmに手切りされています。これは五色涼拌麺のためだけの作業ですが、その手間を惜しんでいないとのこと。タレの甘味は、当時の富裕層である婦人客に合わせたもの。これが当時大ヒットして、いまでも売れ続ける秘訣となっています!
『揚子江菜館』の五色涼拌麺は時代を超えて愛される看板メニュー
いかがでしたでしょうか?今でも愛される看板メニュー、『揚子江菜感』の五色涼拌麺は今も昔も変わらない味。過去と現在をミックスして楽しむというのもまたおすすめですよ!
揚子江菜館
住所 | 東京都千代田区神田神保町1-11-3 |
営業時間 | 11:30~22:00(L.O.21:30) |
定休日 | 年末年始 |
※「近代食堂2019年2月号」に掲載した内容を再編集しています。記載のデータは取材時のものです。 |
プロフィール
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古き良きレトログルメをひたすら紹介。懐かしさを感じる人でも、昔を知らない人でも純粋に楽しんでもらえたら嬉しいです!
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