ザクザク食感が新鮮 フライパンで焼き上げる鯖のパイ包み焼き【パイ包み焼き⑤】

アートのように美しい、独創的なコース料理を展開する「ル・スプートニク」の髙橋雄二郎シェフがたどり着いた答えは、フライパンでした。
ブルターニュ地方の郷土料理「コトリヤード」から着想を得たという鯖のパイ包み焼きは、オーブンを使わない斬新な調理法から生まれる新食感が魅力。香ばしさとザクザク感が際立つ一皿をふれんちハンターがわかりやすく解説いたします。
フライパンが生み出す新食感
このパイ包み焼き最大の特徴は、オーブンを使わず、フライパンだけで焼き上げること。鯖は火が入りすぎるとぱさついてしまうため、オーブンでじっくり焼くのは不向きな素材です。そこで、パイ包みごとフライパンで一気に焼き上げて最低限の火入れにとどめ、身をミ・キュイ(半生状態に火を入れること)に仕上げ、持ち味を最大限に生かしています。
フライパンで焼く発想は、モダン・オーストラリア料理のレストラン「ワトル トーキョー(現在は閉店)」とのコラボレーションがきっかけでした。当時のシェフから「オーストラリアではパイもフライパンで自由に焼く」という意外なアプローチを教わり、髙橋シェフは新たな可能性を感じたといいます。フライパンで焼くとフィユタージュの層はふくらみませんが、層が焼き固められることで、ザクザクとした新鮮な食感と抜群の香ばしさが楽しめます。


ブルターニュの風を感じるソース
パイ包み焼きに添えたのは、鯖の骨の出汁をベースにしたコトリヤード風の白いソース。コトリヤードは、フランス北西部ブルターニュ地方の郷土料理で、「白いブイヤベース」とも呼ばれる魚介のスープです。
本来は鯖やタラなどの魚を骨ごと、じゃがいもなどの野菜と一緒に白ワインとブイヨンで煮込み、シードルを飲みながら味わうのが定番のスタイル。髙橋シェフは、この伝統的な料理のエッセンスを取り入れ、鯖の骨で出汁を引き、骨の半量は焼いてから加えることで香ばしさをプラス。青りんごとシードルも一緒に煮ることで、海の恵みに果実の爽やかさが溶け合う、ブルターニュ地方らしい豊かな風味に仕上げています。

【参考図書】
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伝統の味から革新の新作まで 本書では、老舗フレンチのスペシャリテから、気鋭シェフの最新作まで、パイ包み焼きのバリエーションを紹介。冷前菜・温前菜、魚料理、肉料理、デサートと、ジャンル別に、各店のパイ包み焼きの工夫、技術を解説します。 ■A4・128ページ |
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