かしわ、さくら、ぼたん…肉に植物や花の名前がつけられるのはなぜ?フードマニア編集部がわかりやすく解説!

馬肉は「さくら」、猪肉は「ぼたん」…といったように、日本では肉に植物や花の名前をつける風習がありますよね。ではなぜこのような別名がつけられるようになったのか、なぜ牛肉や豚肉には別名がないのか、気になったことはありませんか?

この記事ではフードマニア編集部が、肉に植物や花の名前がつけられている理由について解説していきます!

なぜ植物や花の名前で呼ぶようになったの?

画像素材:iStock

実は肉に植物の名前がつけられるようになったのは江戸時代のこと。江戸幕府5代将軍徳川綱吉によって「生類憐みの令」が出されると、動物の殺生や、その肉を食べることが厳しく禁じられるようになりました。
しかし、今まで美味しく食べていたものが急に食べられなくなったら嫌ですよね。江戸時代の人々も「食べたい!」という欲求が抑えられず、隠語のように肉に植物や花の名前をつけ、こっそりと食べていたと言われています。

また、当時肉は滋養強壮に効果がある「薬」としての側面もあり、生類憐みの令が出された後も薬屋だけは肉を売ることが許されていました。そのため、多くの肉屋が「薬屋」として名前を変え、あくまで「薬」を売っているというスタンスを取っていたそう。「さくら」や「ぼたん」といった別名は、幕府に目をつけられないための隠語だったんですね。

それぞれの名前の由来は?

ではそれぞれどんな名前で呼ばれているのか見ていきましょう。

さくら(馬肉)

画像素材:iStock

馬肉が「さくら」と呼ばれるようになった理由については諸説ありますが、まるで桜のような色味であったことから、この名前がついたと言われています。

ぼたん、山鯨(猪肉)

画像素材:iStock

実は猪肉には「ぼたん」と「山鯨(やまくじら)」の2通りの呼び名があります。前者については、猪肉を盛り付けた時の見た目が牡丹の花のようであったことから。

また、クジラは魚の一種とされていたため、「山にいるクジラなら食べてもいいはず」という理由で「山鯨」の別名もつけられたとされています。

紅葉(鹿肉)

画像素材:iStock

鹿肉が「紅葉(もみじ)」と呼ばれるようになったのは、花札のイラストが関係しているという説が有力です。花札には1月~12月までの季節の花がそれぞれ4枚ずつ描かれています。そして10月の札にあるのが紅葉と鹿のイラスト。そのため、鹿肉を用いた料理には「紅葉」という名前がついているんですよ。

かしわ(鶏肉)

画像素材:iStock

詳しい由来は分かっていませんが、鶏の茶褐色の羽が枯れた柏の葉に似ていたことから、この名前がつけられたとされています。今でも九州地方や中国地方の一部などでは、鶏肉を「かしわ肉」と呼ぶ習慣が残っています。

牛肉や豚肉には花の名前が無いのはなぜ?

画像素材:iStock

ではなぜ馬肉や猪肉、鹿肉、鶏肉には別名があって、牛肉や豚肉にはないのか。実は生類憐みの令が出された江戸時代、まだ日本では牛肉や豚肉を食べる風習がありませんでした。 それらの肉が食べられるようになったのは、明治時代に入ってから。幕府の目を盗んで食べる必要がなかったために、花の名前がついていないんですね。

植物や花の名前は「隠語」!

画像素材:iStock

いかがでしたか?肉につけられた植物や花の名前は、元々は幕府に隠れて肉を食べるためにつけられた「隠語」でした。現在もその時の名残から、猪肉を使った鍋を「ぼたん鍋」、馬肉の丼を「さくら丼」と呼ぶことがあります。ぜひ名前がつけられた背景や由来を意識しながら、料理を楽しんでみてくださいね。

※画像はイメージです。