表面を保護してふっくらとした食感に リ・ド・ヴォーのムニエル【肉の火入れ技術⑦】

分厚くて凹凸のあるリ・ド・ヴォー(仔牛の胸腺)は、焼きむらができやすく、火入れの難しい食材です。「東京會舘 レストラン プルニエ」の松本浩之シェフは、小麦粉でコーティングして表面を保護しながら焼く「ムニエル」で、中心までふっくら焼きながら表面は焦げずに美しく仕上げる方法を編み出しました。その技術をふれんちハンターが詳しく解説いたします。
焼きむらを克服するムニエル
松本シェフがリ・ド・ヴォーの火入れにムニエルを選ぶようになったのは、ここ数年のこと。臭みのない鮮度抜群のリ・ド・ヴォーが、処理されてからわずか3日でフランスから届くようになったのがきっかけでした。下ゆで時間が格段に短くなり、重石をして水分を抜く必要がなくなったため、リ・ド・ヴォー本来のぷっくりとした形を生かして仕立てることが可能になったのです。
特徴的な形をお客様に楽しんでもらうべく、かたまりのまま調理しようとソテーやフリットなどさまざまな手法を試しましたが、リ・ド・ヴォーは分厚くて凹凸があるせいで、どうしても焼きむらができてしまいます。あらゆる手法を試し、ついにたどり着いたのが、小麦粉でコーティングして表面を保護しながら焼くムニエルでした。

澄ましバターで優しく、仕上げにバターで風味を
一般的なムニエルは、小麦粉をつけた素材をバターできつね色に香ばしく焼きます。しかし、厚みのあるリ・ド・ヴォーの場合、最初からバターを使うと中まで火が入る前に表面が焦げてしまいます。
そこで、まず澄ましバターを鍋に入れ、中火から弱火のやさしい火加減でじっくり焼きます。8割程度まで火が入った段階でバターを加え、焦がさないよう気をつけながらバターの風味をまとわせます。この方法なら、中心までふっくら焼きながら、表面は焦げずにきれいな焼き色をつけられます。
また、片面だけを下にして焼き、反対側はスプーンで澄ましバターをかけて火を入れると、よりふんわりとした食感に仕上がります。使う鍋は、熱伝導がよく、温度を均一に保ちながら焼ける銅鍋がおすすめだそうです。

焼き上げてから客席へ運ぶまでは2〜3分。そんなわずかな間にも余熱で火入れは進みます。その時間も計算に入れ、切ったときに肉汁が流れ出さないぎりぎりの状態を見極めています。最後の繊細な判断が、ふっくらとジューシーな食感をさらに高めているのです。

【参考図書】
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フランス料理の基礎技術の中から「肉の火入れ」に特化し、30年以上の経験を持つベテランのフレンチシェフ5名に、ロティ、ポワレなど古典的な調理法を素材ごとに詳しく解説。 ■A4・112ページ |
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