カリカリの香ばしい皮で力強く ジラルデ直伝のフォアグラ・ポワレ【肉の火入れ技術⑤】

フランス料理の大定番、フォアグラのポワレ。焼き方にはさまざまなスタイルがありますが、駒込にある「ル・リュタン磯谷」の磯谷卓シェフは、伝説の名店「ジラルデ」で学んだ手法を貫き、じっくり時間をかけて驚くほど色濃く焼き上げます。力強い味わいを生む磯谷シェフのポワレ技術を、ふれんちハンターが詳しく解説いたします。
生のフォアグラがもたらした変革
生のフォアグラが日本に空輸されるようになったのは1980年代以降。それまでは缶詰のテリーヌが主流でしたが、念願の生が使えるようになったことで、フライパンでシンプルに焼き上げるポワレが一大ブームとなり、テリーヌと並ぶ代表的なフォアグラ料理として定着しました。その人気はフランス料理にとどまらず、和食や中華、ファストフードにまで浸透したほどです。
定番だけに、料理人によってポワレの仕方はさまざま。軽く焼いて表面も内側もとろっとした食感に仕上げる料理人も多いですが、磯谷シェフは表面にカリカリの香ばしい皮を作るのが特徴です。外皮と内側の食感のコントラストが強烈で、とろっとしただけのポワレでは味わえないパンチの効いたおいしさがあります。
強力粉をまぶし、両面を色濃く焼き上げる
フォアグラは冷蔵庫から出したばかりの冷たい状態で塩をふり、強力粉を刷毛で薄くまぶします。フライパンに太白ごま油を入れて温めたら、強火にしてフォアグラをのせます。脂が出てきたら少し火を弱め、鍋を傾けて脂につかるようにしてじっくりポワレしていきます。表面が濃い茶色になるまで十分に焼いたらひっくり返し、裏面も同様に色濃くカリカリに焼き上げます。
金串を刺して芯温を調べ、くちびるがツーンとするくらいに熱かったら(60℃以下程度)完成。バルサミコ酢とフォン・ド・ヴォーを煮詰めた濃厚なソースをかけて料理を仕上げます。

師から受け継いだ信念
「よい食材ほど、きちんと加熱しないと持ち味が出ない」。
磯谷シェフが5年間働いた「ジラルデ」の料理長、フレディ・ジラルデ氏の信念です。ジラルデはミシュランガイドでスイス初の三つ星を獲得し、フレディ氏は「世紀のシェフ」と称された伝説の料理人。1996年に惜しまれつつも引退しましたが、彼の教えは愛弟子である磯谷シェフの料理の根底に今も変わらず流れています。
この教えを実践するには、高温で時間をかけて焼くことに耐えられる、脂が溶けづらい良質なフォアグラが不可欠です。全重量の約半分が脂肪であるフォアグラは、脂肪のかたまりをフライパンに直接のせて焼くようなもの。質のよくないフォアグラだと、脂の大半が流れ出てしまいます。
磯谷シェフは新しいフォアグラが届くと端を切って焼いてみて脂の出方を調べ、脂が出やすいものはポワレには使わず、フランなどに利用しているそうです。
良い素材を見極め、確かな火入れ技術でじっくり加熱する。師から受け継ぐ信念こそが、磯谷シェフのポワレに力強さを与えているのです。


【参考図書】
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フランス料理の基礎技術の中から「肉の火入れ」に特化し、30年以上の経験を持つベテランのフレンチシェフ5名に、ロティ、ポワレなど古典的な調理法を素材ごとに詳しく解説。 ■A4・112ページ |
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