現代のシェフを魅了する古典料理 “パイ包み焼き”の最先端【パイ包み焼き①】

フランスの古典料理を代表する「パイ包み焼き」が、いま、再び脚光を浴びています。クラシックやモダンの垣根を越えてレストランのメニューを席巻しているのです。
なぜ、数世紀に渡って受け継がれてきた古典料理が、これほどまでに現代のシェフを魅了しているのでしょうか。
この記事では、パイ包み焼きの魅力について、ふれんちハンターがわかりやすく解説いたします。
熟練の技が試される、究極の火入れ
パイ包み焼きの魅力は、切ってみるまで中の状態が分からない点にあります。生地と具材という、火の入り具合が異なる素材を、同時に最適な状態に焼き上げるには、温度や時間の緻密なコントロールが求められ、あらゆる料理の中でも高度な技術を必要とします。
「パイ包み焼きを食べれば、シェフの腕が分かる」
そう言われるように、その圧倒的な難しさがプロの挑戦心を刺激しているのです。
代表的な一品が、パイ生地でパテを包んで焼き上げる「パテ・クルート」。その世界一を競う「パテ・クルート世界選手権」では、2024年に日本代表が1位と2位を独占しました。日本の技術は、いまやフランス本場をも驚かせるほどのレベルに到達しています。


自由な発想が生む新スタイル
完成をイメージしながら具材を組み合わせていく楽しさも、パイ包み焼きが人気の理由です。断面の美しさや斬新な味を目指し、シェフたちは新旧さまざまな技術を駆使して、独創性あふれるパイ包み焼きを日々模索しています。
日本語で「パイ包み焼き」と聞くと、折り込みパイ生地のフィユタージュを思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし、フランス語でパイ包み焼きを意味する“en croûte” (アン・クルート)は、「固い皮に包まれた」と直訳できるように、必ずしもフィユタージュを使う必要はありません。生地の選択は自由なのです。
最近では、ヴィーガンバターを使った生地や、日本の郷土料理「おやき」から着想を得たそば粉入りの生地など、現代人の嗜好や各地の文化を融合した新たなアプローチが次々と誕生しています。

これまで培ってきたテクニックとアイデアを総動員し、一歩先のおいしさと美しさを追いかける最先端のパイ包み焼き。そこには、時代をリードする料理人たちの情熱が詰まっているのです。
【参考図書】
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伝統の味から革新の新作まで 本書では、老舗フレンチのスペシャリテから、気鋭シェフの最新作まで、パイ包み焼きのバリエーションを紹介。冷前菜・温前菜、魚料理、肉料理、デサートと、ジャンル別に、各店のパイ包み焼きの工夫、技術を解説します。 ■A4・128ページ |








