ポワレとロティを組み合わせたハタの複合火入れ術【魚介の火入れ技術④】
ポワレで皮を焼き、ロティで身を仕上げる。東京・六本木にある「トレフ・ミヤモト」の宮本雅彦シェフは、鳩の調理で培った手法をハタに応用し、外側と中心の温度を均一にすることで理想的な火入れを実現しています。厚みのある皮でもカリッと香ばしく、身はジューシーに焼き上げる技術を、ふれんちハンターが詳しく解説いたします。

■皮下のゼラチン質を攻略する
身の繊維が細かいハタや鯛類、厚みのある切り身などは、ポワレだけで完全に火を入れると身が固くなってしまいます。特に背側の身は、腹側に比べて締まっており、中心まで火を入れる間にまわりが固くなってしまうのです。そこで宮本シェフが取り入れているのが、オーブンを使った間接的な火入れです。
ハタ類の火入れでは、皮と身の間にあるゼラチン質をいかに攻略するかが、おいしさを左右します。今回使用するオオモンハタは、ほかの白身魚に比べて皮が分厚く、皮下のゼラチン質も多いため、皮目に切り込みを入れ、まずはフライパンで皮面をしっかり焼いて、ゼラチン質まで十分に火を入れます。このとき、魚が油を吸ったらそのつどオリーブオイルを足し、フライパンに油がうっすらと敷かれている状態を維持するのがコツ。油が緩衝材となってフライパンに皮が直接つかず、カリッと香ばしく焼き上げられます。
また、ハタ類は水分が多いため、3枚おろしの状態で脱水シートに包んで半日ほどおき、余分な水分を抜いてから使います。こうすることで、ポワレ中に水分が出て皮がべたつくのを防ぎ、カリッとした焼き上がりを実現できます。二つの工夫で皮を香ばしく焼き上げたあと、ロティで身をふっくら仕上げていきます。


■小刻みに休ませて温度を均一に
宮本シェフのロティは、オーブンに入れっぱなしにするのではなく、小刻みにオーブンから取り出して室温で休ませ、外側と中心の温度をできるかぎり均一に、じっくり火を入れていくのが特徴です。
この手法は、もともと鳩などの骨つき肉をしっとり仕上げるために30年近く前に編み出したもので、魚種や身の厚みに合わせて温度や焼き時間を微調整しながら、魚の火入れに応用しています。(詳しくはコラム「全部位をしっとり焼き上げる 鳩肉のロティ【肉の火入れ技術②】」で解説しています)
オオモンハタの場合は、皮面をポワレで香ばしく焼き上げたら、温かい場所で5〜10分ほど休ませます。余熱で全体の温度を均一にすることで、オーブンに入れたときに外側だけが急激に火が入って固くなるのを防ぎます。指で触ってまだ柔らかさが残っているぐらいが、オーブンに入れる目安です。

■厚みに応じて火入れを調整する
オオモンハタはハタの中では比較的身が薄いため、上火210℃、下火200℃のオーブンに3分ほど入れるだけでジュスト・キュイ(ちょうどよい火入れ)になります。
しかし、さらに身の厚い魚の場合は、3分ほどオーブンに入れたら取り出し、同じ時間だけ休ませる作業を何度か繰り返します。こうして徐々に温度を上げていくことで、中心までむっちりとした理想的な食感に仕上がるのです。
直接的な火入れと間接的な火入れを巧みに使い分ける。宮本シェフの複合的な火入れ技術は、素材の特性を深く理解しているからこそ実現できる職人技です。

【参考図書】
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繊細な技術である「魚介類の火入れ」に焦点を当て、フランス料理の基本となるポワレ、 ■A4変・112ページ |
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