クリアで雑味のないブイヨンを取る 豚すね肉のブイイール【肉の火入れ技術⑥】

「ブイイール」とは、素材をゆで煮する調理法で、煮汁であるブイヨンごと提供するのが一般的です。六本木にある「トレフ・ミヤモト」の宮本雅彦シェフによれば、日本の水は硬水の多いヨーロッパに比べて煮崩れや濁りが出やすいため、クリアなブイヨンを作るのが難しいのだといいます。そこで、宮本シェフが5年以上かけて編み出した、日本の水でもクリアで雑味のないブイヨンを取る技術を、ふれんちハンターが詳しく解説いたします。
塩漬け肉で濃厚なブイヨンに
ブイイールと混同されやすい調理法に「ポシェ」があります。ポシェでは肉のおいしさを重視するのに対し、ブイイールは、ブイヨンをおいしく仕上げることに比重が置かれているのが大きな違いです。たとえば、同じ鶏肉でも、ポシェでは身質のよい若鶏、ブイイールには出汁がよく出る親鶏が多く使われます。
ブイイールの代表的な料理であるポ・ト・フでは、宮本シェフは塩漬けにした肉を使用します。塩漬けにした方が浸透圧で煮汁に味が出やすく、濃厚なブイヨンに仕上がるからです。豚すね肉の場合は真空にかけて10日ほど漬けますが、鶏肉の場合はひと晩、牛すね肉の場合は2週間と、素材や部位の状態に合わせて塩漬け期間は大幅に異なります。

軟水の特性を理解し、火加減をコントロール
宮本シェフがポ・ト・フ作りでもっとも大切にしているのが、クリアで澄んだ味のブイヨンを取ることです。日本の水の大半を占める軟水は、ヨーロッパに多い硬水に比べ、素材の味が液体に溶け出しやすい性質があります。そのため、よい出汁が取れる反面、野菜などは煮崩れやすく、液体が濁りやすいのです。
フランス修業で学んだ方法を日本で何度試しても一向に満足のいくブイヨンが取れず、悩んでいた宮本シェフは、帰国してから5年以上かけてとことんブイヨンと向き合い、この軟水の性質を突き止めました。
煮込み料理は、弱火でじっくり煮るのが定石だと思われがちですが、温度が低いとアクが浮きづらく、不純物が対流して液体が濁りやすくなります。そこで、軟水で作る場合は、はじめに沸騰させてアクを取ったら、そのあとも軽い沸騰状態が続くやや強めの火加減を保ちます。
また、ミルポワが煮崩れると液体が濁り、味にもえぐみが出ます。そのため、煮崩れずにうま味だけが煮汁に移るよう、煮込み時間から逆算して野菜のサイズと切り方を決めていきます。

不純物を徹底的に取り除く
煮上がったら、肉を液体に漬けたまま粗熱を取り、肉汁を肉の中に戻します。その後具材を取り出し、煮汁を漉してそれぞれを冷やします。煮汁も冷やすことで脂と不純物が冷え固まるので、表面に固まった脂はスプーンでこそげ取ります。
宮本シェフによれば、表面の脂は酸化していて胃がもたれやすく、取り除いた方がクリアな味わいに仕上がるのだそうです。さらに、液体は再度沸騰させ、紙漉しして不純物を徹底的に取り除きます。
日本の水質を理解し、常識にとらわれず独自のスタイルを探究する姿勢が、透明度が高く、澄んだ味わいのクリアなブイヨンを完成させているのです。


【参考図書】
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フランス料理の基礎技術の中から「肉の火入れ」に特化し、30年以上の経験を持つベテランのフレンチシェフ5名に、ロティ、ポワレなど古典的な調理法を素材ごとに詳しく解説。 ■A4・112ページ |
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