低温のやさしい火入れでジューシーに ホロホロ鳥胸肉のポシェ【肉の火入れ技術④】

「ポシェ」とは、ブイヨンやワインなどの液体の中で素材をゆでる火入れ技術です。水溶性の液体は100℃前後までしか温度が上がらないため、素材に柔らかく火が入り、しっとりとした食感が得られます。南青山にある「レストラン タニ」の谷利通シェフによれば、ポシェは「香り、味、食感、すべてが完璧な調理法」だといいます。ここでは、ホロホロ鳥の胸肉を使ったポシェの技術を、ふれんちハンターが詳しく解説いたします。

高温調理とは別世界の柔らかな味わい

200〜300℃にも達するフライパンやオーブンを使った高温加熱とはまるで異なる、やさしい食感と味わいがポシェの魅力。液体の中で加熱することで、ゆで汁のうま味や香りを吸い込んでおいしさが増すメリットもあります。

また、ポシェと同様に低温加熱ができる真空調理との違いについて、谷シェフは次のように語ります。

「真空状態でウォーターバスなどを使って加熱した場合は、肉がもつ嫌な臭みまで封じ込まれてしまい、蒸れた香りになりがちです。それに対し、ポシェは液体に肉が直接触れるので、臭みは液体に移り、肉がクリアな香りに仕上がります」

家禽の胸肉のようにパサつきやすい肉にうってつけの調理法ですが、谷シェフは仔羊背肉にもポシェを用いることがあるそう。油脂を使ったローストとはまた違う独特の食感が得られ、夏バテや疲れたときに体が癒やされるさっぱりとした羊料理に仕上げられるといいます。

8割は低温の液体で、2割は余熱で火を入れる

肉を入れるときは、事前に液体を85℃前後まで温めておくと、肉のまわりが少し固まってうま味を閉じ込められます。ホロホロ鳥の場合はやや低めの70℃前後に保ったコンソメで、20〜30分ポシェするとしっとりと仕上がります。ポシェ中に液体の温度が上がりすぎないよう、鍋と熱源の間には網をかませ、温度計で液体の温度を計っておくと安心です。

肉の状態は指で押して弾力でチェックしますが、強く押しすぎると肉のエキスが出てしまうので、やさしく触るように心がけます。8割程度まで火が入ったらコンソメから取り出し、乾かないようにラップをして保温棚にのせ、残り2割は余熱で入れます。これが、よりしっとりとジューシーに仕上げるポイントです。

ポシェでしか表現できないおいしさ

ポシェに使ったコンソメには、ホロホロ鳥の肉汁が滲み出ています。これを煮詰めてバターのコクを足し、レモンの皮と果汁で爽やかに仕上げれば、レモンバターソースの完成。ゆで汁をそのまま使うことで一体感のあるおいしさが得られます。

皮下脂肪がたっぷりついた皮は、肉からはがしてフライパンでカリカリになるまで焼き、香ばしさと食感を料理のアクセントとして生かしています。

素材をやさしく包み込むような火入れで、しっとりとしたジューシーさと、クリアな香りを生み出すポシェ。最近では真空調理が定番化し、出番は少なくなりつつありますが、ほかの調理法では代替できないポシェならではのおいしさを、谷シェフは今も変わらず大切にしています。


【参考図書】

古典技法から学ぶ
フランス料理 肉の火入れ技術


フランス料理の基礎技術の中から「肉の火入れ」に特化し、30年以上の経験を持つベテランのフレンチシェフ5名に、ロティ、ポワレなど古典的な調理法を素材ごとに詳しく解説。

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■A4・112ページ
■ISBN-13:9784751115008
■4,180円(税込)