機械に頼らず職人の感覚を磨く 肉の火入れを極める【肉の火入れ技術①】

調理器具の目覚ましい発展によって、フランス料理の火入れ技術は大きく変化してきました。ウォーターバスや真空調理器などの便利な器具が普及し、ボタンひとつで精密な温度管理が可能になった一方で、料理人が手と感覚で技術を磨く機会は以前よりも減少しています。そんな今、改めて注目されているのが、古典的な「肉の火入れ」の技術です。数値だけに頼らず、素材の状態を見極める力を養う重要性を、ふれんちハンターが解説いたします。
便利な調理場で失われつつあるもの
ウォーターバスや真空・減圧調理器などの調理機器は、経験豊富なシェフが使いこなせば非常に便利な道具です。しかし、調理がボタンひとつで完了してしまうため、まだ経験の浅い修業中の料理人たちは、職人らしい技術や感覚を養う機会が以前よりめっきり減ってしまいました。
さらに、料理人の労働環境も大きく変化し、限られた人数と時間で仕事をこなさなくてはならなくなりました。調理場は合理化の一途を辿り、技術習得の機会はさらに減少しています。こうした状況だからこそ、ロティやブレゼといった古典的な調理法を通じて、肉の火入れという基礎技術を学び直すことが求められているのです。

“なんのために?”を考える重要性
フランスの三つ星レストランで研鑽を積み、「ソースの宮本」として知られる六本木「トレフ・ミヤモト」の宮本雅彦シェフは、30年以上の経験を持つベテランです。後進の育成にも力を注ぐ宮本シェフは、こう話します。
「工程の意味をきちんと考え、理解することで、修業先で学ぶ料理や料理書で読むレシピからも、必ずシェフの意図を読み解けるようになります。先輩から手取り足取り教わることは難しくても、普段から”なんのために?”を考えながら働けば、おいしい料理を作るヒントはあちこちで見つかるはずです」
各工程には必ず意味があります。なぜこの温度で焼くのか、なぜ休ませるのか。その理由を理解することで、素材の状態や焼き上がりを自分の目と手で見極められるようになります。数値だけに頼らず、料理の意図を読み解ける力が身につけば、職人として確実にスキルアップし、応用力を高めることにつながるのです。

感覚を磨き、技術を次世代へ
調理器具の進化は料理界に革新をもたらしましたが、それと同時に料理人が持つべき感覚や技術の重要性も、改めて見直されています。素材と対話し、手で感じ、目で判断する。こうした職人としての基礎を磨くことが、これからの料理人には不可欠なのです。

【参考図書】
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フランス料理の基礎技術の中から「肉の火入れ」に特化し、30年以上の経験を持つベテランのフレンチシェフ5名に、ロティ、ポワレなど古典的な調理法を素材ごとに詳しく解説。 ■A4・112ページ |
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