自分の脂で煮込み、うま味を深める 乳飲み仔羊のコンフィ【肉の火入れ技術⑩】

素材を脂の中で低温加熱する「コンフィ」。駒込にある「ル・リュタン磯谷」の磯谷卓シェフは、「素材自身の脂の中で火を入れる」ことを原則とし、火を入れすぎずしっとりと仕上げるコンフィを追求しています。磯谷シェフが新たに挑んだ乳飲み仔羊のコンフィを、ふれんちハンターが詳しく解説いたします。

シェフが惚れ込む、脂たっぷりの国産仔羊

磯谷シェフが仔羊のコンフィに挑んだきっかけは、鳥インフルエンザの影響でフランス産の家禽肉が入手困難になったことでした。お客様から鴨のコンフィをリクエストされましたが、シャラン鴨などのフランス産が使えません。そこで、鴨肉のかわりに乳飲み仔羊肉でコンフィを試みました。

磯谷シェフのコンフィの原則は、「素材自身の脂の中で火を入れる」こと。鴨肉では鴨脂を使うように、仔羊なら仔羊の脂で煮るのが理想です。

使用するのは、北海道白糠町「羊まるごと研究所」で育てられた仔羊。約20年前に出会って以来惚れ込んでいる国産の仔羊で、脂の量が多く、肉にうま味があるのが特徴です。この羊をさばくと白い脂肪がたっぷりたまり、これを少量の水で煮ると、半頭から1リットル以上の脂が取れます。この脂を使ってコンフィを作ります。

脂がよくのった仔羊が手に入るからこそ成立するコンフィです。

火を入れすぎず、脂の中で休ませる

コンフィでは、火を入れすぎないことを何より大切にしているという磯谷シェフ。煮るときの脂の温度は80℃から85℃が上限で、肉の細胞が壊れはじめた直後、まだ繊維質がしっかり保たれ、ジューシーな状態に煮上げます。もろもろとした食感になるまで長時間コンフィすることが多い鴨肉も、磯谷シェフはしっとり感を重視します。

加熱時間は肉の大きさによって異なります。小さな脚肉なら75分から90分と短めですが、仔羊もも肉のような大きなかたまりの場合は3時間半に延ばします。

煮上がった肉は、漉した脂の中に戻し、冷蔵庫で1日以上休ませます。ロティ後に休ませるのと同じで、肉の内側でぐるぐるまわっているジュが落ち着くイメージです。この間にうま味も強くなるのだそうです。

おいしさが持続する、仕上げのひと工夫

最後にカリッと表面を焼き上げたら完成。このとき、冷蔵庫から出したての冷たいままではなく、コンフィが煮上がったときの温度まで戻すのがポイントです。湯煎にかけて温め、コンフィの脂から肉を取り出します。

また、焼くときの油は、羊の脂ではなくオリーブオイルを使います。鴨の脂と比べて羊の脂は固まりやすく、ゆっくり食べるお客様の場合、食事の途中で白く固まりかけてしまうからです。

油脂の特性を見極め、最後まで最良の状態で提供する。細やかな配慮が、コンフィの完成度をさらに高めています。


【参考図書】

古典技法から学ぶ
フランス料理 肉の火入れ技術


フランス料理の基礎技術の中から「肉の火入れ」に特化し、30年以上の経験を持つベテランのフレンチシェフ5名に、ロティ、ポワレなど古典的な調理法を素材ごとに詳しく解説。

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■A4・112ページ
■ISBN-13:9784751115008
■4,180円(税込)