和の技法が生む上質な口当たり ウナギのブレゼ【魚介の火入れ技術⑤】

弱火でじっくりと蒸し煮する「ブレゼ」。東京・南青山にある「レストラン タニ」の谷利通シェフは、フランスの伝統的な調理法であるブレゼに、日本料理の繊細な下処理技術を組み合わせ、なめらかで臭みのない上質なウナギの赤ワイン煮を仕上げています。谷シェフの火入れ技術を、ふれんちハンターが詳しく解説いたします。

■じっくり煮て、うま味と食感を磨く

ブレゼの利点は、煮ることで味がよく染み込むところですが、魚の場合は向き不向きがあります。煮ることで臭みが出る魚、長時間の加熱で身が固くなる魚、うま味が抜けてしまう魚では、おいしく仕上がりません。

そんな中で、谷シェフが注目したのがウナギです。長時間煮てもうま味が抜けないどころかさらに凝縮し、とろけるような食感に磨きがかかる。煮ながら味を含ませておいしくなる魚として、ウナギは最高峰だと谷シェフは言います。

フランス料理でウナギといえば、ボルドー地方の「マトロート」が有名です。ウナギを皮付きのまま骨ごと筒切りにして赤ワインで煮込む伝統的な郷土料理ですが、古典的なレシピでは皮のぬめりを取らずに加熱するため生臭く、骨が口に残ります。日本人にはやや食べづらく感じられることが多いのです。そこで、谷シェフは、マトロートに日本料理の技法を取り入れることにしました。

■日本料理の技法で骨と臭みを解決

まず、筒切りではなく、蒲焼きのように背開きにします。皮のぬめりを徹底的に取り除き、塩水に1時間つけて臭みを抜いたら、赤ワインで2日間マリネして香りを吸わせます。その後、蒸して皮をやわらげ、小骨まできれいに抜き取ります。

次に、ウナギ100%のムースを絞り出してマトロートと同じ筒形に整え、網脂で巻いて表面を香ばしく焼き上げます。こうしたていねいな下処理が、日本人が納得できるおいしさを生み出します。

■煮込みは1時間がベスト

焼き上がったウナギは、あらかじめこんがり焼いた頭と中骨、野菜と一緒に赤ワインでブレゼします。このとき、ウナギ全体が液体につかった状態にするのがポイント。骨のだしがよく身に染み、ソースとの一体感が生まれます。

長く煮すぎると味が抜け、網脂の脂肪分も溶け出てしまうため、煮込み時間は1時間がベスト。煮上がったら液体ごとさまし、冷蔵庫で一晩寝かせて味をなじませます。

翌日、煮汁を漉してブールマニエでとろみをつけ、ウナギを温め直したら完成です。ブールマニエでつなぐことで、味が決まります。

フランスの伝統的なマトロートの形を残しつつ、日本料理の繊細な技術で臭みを取り除いた谷シェフのブレゼ。二つの料理文化の長所を融合させた、日本ならではのフランス料理です。


【参考図書】

古典技法を追求!
フランス料理 魚介の火入れ技術


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■A4変・112ページ
■ISBN-13:9784751115381
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