炭とバターの香りでリッチに 熟成サワラのグリエ【魚介の火入れ技術⑥】

グリエは、もともと直火で炙り焼きにすることを意味するフランス語です。東京・代官山にある「サンプリシテ」の相原薫シェフは、現在の調理場で主流となっているグリヤードではなく、炭火の網焼きで、より原点に近いグリエに取り組んでいます。炭ならではのおいしさを追求する相原シェフの技術を、ふれんちハンターが詳しく解説いたします。

■炭でしか表現できないおいしさ

サンプリシテは、魚介に特化した稀有なフランス料理店。魚の扱いや寝かせ方を研究するうちに熟成への情熱が高まったという相原シェフは、移転を機に庫内温度3〜4℃、湿度60〜70%に設定した魚専用の熟成庫を店に設置し、四季を通してさまざまな魚の熟成に取り組んでいます。

今回使用するのは、5日間熟成させたサワラ。熟成で深めたうま味をさらに引き立てるべく、シェフが選んだのが炭火です。
「グリヤードではなく、炭焼きや薪焼きでより原点に近づけたいと思っています。炭火で焼くことで香りが直接皮に移り、同じ魚でもポワレより1段階おいしくできるのです」と相原シェフ。
網焼きは皮が網にくっつきやすく、熱源のコントロールも容易ではありませんが、それでも炭でなければ生まれないおいしさがあるのだといいます。

■2つの熱源を使い分ける

まず、サワラにはあらかじめ塩水をスプレーして下味をつけ、皮に澄ましバターを刷毛で塗ります。塩水には、全体にまんべんなく下味をつけながら乾燥を防ぐ効果が、澄ましバターには、網にくっつくのを防ぐだけでなく、炭火にかざすことで香り立ち、魚の風味をよりリッチにする効果があります。

相原シェフの考えるグリエの目的は、皮だけをパリッと香ばしく焼き上げること。皮を下にして網の上にのせたら、皮側だけを炭火で7〜8割焼き、身側はサラマンドルでやさしく火を入れます。串を身に刺し、唇に当ててみて温かければ、中心温度が45〜50℃になっている合図。ここでサラマンドルから取り出します。

ここから、さらにもうひと手間。サラマンドルに入れると炭の香りが若干落ちてしまうため、再び澄ましバターを皮に塗り、炭火で軽く焼き直して香りを一気に際立たせます。

■いりこだしで仕立てる赤ワインソース

香り高いグリエに合わせるのは、赤ワインソースです。といっても、ソースのベースとなるのはフォン・ド・ヴォーではなく、昆布、いりこ、乾燥白菜、乾燥シャンピニョンから取っただし。相原シェフは、このいりこだしを肉料理におけるフォン・ド・ヴォーの位置づけで活用しています。

仕上げに、80℃に温めた赤ワインソースにマグロ節の薄削りを加え、20分間煮出して風味づけします。沸騰させると香りが飛び、えぐみが出てしまうので、温度管理には細心の注意が必要です。

主役の魚との相性は高めながらも、いりこやマグロ節の風味は押し出さず、あくまでも正統的な赤ワインソースとして成立させる。魚介料理に対する相原シェフの信念が、このソースには詰まっています。


【参考図書】

古典技法を追求!
フランス料理 魚介の火入れ技術


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■ISBN-13:9784751115381
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