とろみ効果で驚きのしっとり感 寒ダラのポシェ【魚介の火入れ技術⑨】

ブイヨンや水などの液体で素材をゆでる調理法、ポシェ。東京會舘「レストラン プルニエ」の松本浩之シェフは、がごめ昆布から取れるとろみの強い液体で魚をポシェし、みずみずしく、しっとりと仕上げます。松本シェフ独自のポシェ技術を、ふれんちハンターが詳しく解説いたします。

■とろみがもたらす、3つの効果

北海道の特産品である「がごめ昆布」は、ねばり成分の「フコイダン」を豊富に含み、一般的な昆布とは異なる強いねばりを持つのが特徴です。
このがごめ昆布を水に一晩浸し、弱火で沸かない程度に30分ほど煮出すと、独特のとろみを持つ「がごめ昆布水」が取れます。松本シェフは、この濃度のある液体の中で魚をポシェするといいます。

濃度のある液体を使うメリットは3つ。1つ目は、素材が液体の中で動きづらいため、身崩れを防げること。2つ目は、素材のうま味が液体に抜けづらく、味を閉じ込められること。うま味の含有量が多いがごめ昆布水を素材が吸うことで、うま味の相乗効果も期待できます。3つ目は、濃度があることで液体の温度変化がゆるやかになり、温度キープがしやすいことです。

松本シェフは、魚をもっともしっとり仕上げたいときにこの調理法を用います。コンフィのように低温でゆっくり火入れできるうえ、とろみの強い液体を表面にまとわせることでしっとり感がさらに増すのです。昆布水自体にくせがないので、さまざまな魚種に応用できるのも強みです。

■引き締めてから昆布水に沈める

今回使用するのは、北海道・根室産で一本釣りされた活け〆のマダラ。水分の多いタラの場合、切り身にして塩をふり、脱水シートに包んで一晩寝かせ、余分な水分と臭みを取り除いてから調理します。ポシェには、身が厚く繊維が細かい背身だけを使います。寒ダラの季節なら、身だけでなく、白子も一緒にポシェするのがおすすめです。

がごめ昆布水を温めたら、昆布が入った状態でタラを加え、液体の温度を80℃に保ちながら10分ほどポシェします。ゆで上がったタラはがごめ昆布水を吸い、驚くほどしっとり。みずみずしく、ふっくらとした食感に仕上がります。

■北海道のテロワールを一皿に

ポシェしたタラは、身を繊維に沿って1枚ずつはがし、ゆでたゆり根と一緒に盛りつけます。見た目がよく似た両者は、口に入れてみるまでどちらか分かりません。遊び心あふれる仕立てです。

ポシェに使ったがごめ昆布から、上面にちらしたいくらまで、メイン食材はすべて北海道産。同じ土地で育まれた素材が奏でる一体感は、松本シェフが日々の料理作りで大切にしている「テロワール」のおいしさそのものです。


【参考図書】

古典技法を追求!
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