蒸気でふんわり、極上の口溶け 穴子のヴァプール【魚介の火入れ技術⑧】
蒸気の力で魚をふっくらと仕上げるヴァプール。東京・六本木にある「トレフ・ミヤモト」の代表作「穴子とフォアグラの一皿」も、この調理法を用いた料理です。穴子を極上の口溶けに仕上げる宮本雅彦シェフの技術を、ふれんちハンターが解説いたします。

■江戸前の穴子をフレンチに
穴子を型に詰めて美しく蒸し上げ、ホタテとフォアグラのポワレとともに味わう料理は、30年以上前から美食家たちに愛されてきた宮本シェフの不動のスペシャリテです。
創案した当時は、江戸前を代表する穴子をフランス料理に取り入れるという発想自体が新しく、日本庭園の「枯山水」から着想を得た盛り付けも含め、日本らしさが話題を呼びました。
宮本シェフがこの料理でヴァプールを採用した理由は、身がふんわり仕上がるだけでなく、小骨まで柔らかくなり、極上の口溶けが味わえるからです。的確な温度管理さえできれば、繊細な穴子でも身崩れを起こしづらく、美しく仕立てやすいのも魅力だったといいます。

■85℃で20分のゴールデンタイム
背開きにした穴子は、中骨を取って皮が外側になるように丸め、セルクルに詰めて蒸し上げます。スチームコンベクションの設定は85℃で20分。骨が口に当たらないくらい柔らかく、それでいて身の脂が抜けずにふんわりと仕上がるベストな条件です。温度が高すぎると焼き縮みが起こり、逆に低温で時間をかけすぎると身崩れしてしまいます。
使用する穴子は、身に脂がのりつつ、やや小ぶりの160gサイズが最適。大きすぎると骨が太くて口に残りやすくなります。

蒸し上げたら熱いうちに形を整え、冷蔵庫で一晩寝かせます。一度冷やすことで穴子のゼラチン質が固まり、セルクルを外しても形状を保てるので、立体的な盛りつけが可能です。提供時には温める程度に蒸し直してから盛りつけます。

■2種のソースに進化したスペシャリテ
穴子の中にワイルドライスのファルスを詰め、ホタテ貝柱とフォアグラのポワレをのせて組み立てたら、2種のソースで仕上げます。


当初はソース・ポルトだけで甘く仕上げていましたが、穴子には酸味を加えたほうがキレのある味になると考え、ブール・ブランソースをプラス。2色のソースのコントラストが美しい現在の形になりました。
最後に、煮穴子に山椒をふるように、コリアンダーシードをちらして味わいを引き締めたら完成です。
30年以上前に生まれた一皿でありながら、ソースやスパイスを見直して味わいに磨きをかけ、進化を続けているスペシャリテです。

【参考図書】
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繊細な技術である「魚介類の火入れ」に焦点を当て、フランス料理の基本となるポワレ、 ■A4変・112ページ |
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