岩塩で香りごと封じ込める 真鯛の塩釜焼き【魚介の火入れ技術⑩】

フランス語で「アン・クルート・ド・セル」と呼ばれる塩釜焼き。最近ではあまり見かけなくなりましたが、東京・代官山にある「サンプリシテ」の相原薫シェフは「あらためて作ってみると、その合理性に感心させられた」といいます。その魅力を、ふれんちハンターが解説いたします。

■切り身では味わえないおいしさ

岩塩を大量に使い、使い回しもできない。

卵白と小麦粉を一緒に練り合わせた岩塩の衣で魚を丸ごと包み、オーブンで焼き上げる塩釜焼きは、手間と時間がかかるため、効率が優先される現在の調理場ではあまり行われなくなりました。

相原シェフも久しぶりに作ってみたそうですが、火入れの加減も塩味もちょうどよく仕上がったことに大きな手応えを感じました。

「大きな魚を丸ごと焼くおいしさは、切り身では決して味わえません。豪華で見栄えもよく、なによりお客様に喜んでもらえます」。

塩釜焼きの長所は、魚に丸ごとゆっくり火を入れられるため、ひときわしっとりと仕上がること。塩がじわじわ浸透してほどよい塩味がつくこと。そして、魚の持つ香りと味を逃さず閉じ込められることです。

一方で欠点もあります。香りの悪い魚は臭みが増してしまい、タイミングを誤ると火も塩もどんどん入って後戻りができません。外から中が見えない調理法だからこそ、データの蓄積と修練が欠かせないのです。

■キャベツで塩の浸透を制御する

今回使う真鯛は、5日間熟成させてうま味を引き出したもの。内臓抜きで1.2kg、6人前がとれるサイズです。腹には生姜、コブミカンの葉、パセリの茎を詰めて香りづけておきます。

真鯛を直接塩釜に入れると塩が入りすぎてしまうため、ゆでたちりめんキャベツですっぽりと包みます。キャベツが塩の浸透をやわらげ、塩味の入り方を穏やかに制御してくれます。見た目は大胆ですが、味わいは繊細。このひと手間が、塩釜焼きの仕上がりを大きく左右します。

天板に塩釜を敷き込んで真鯛をのせたら、上から覆ってパレットで叩いて固めます。首の付け根はもっとも火が入りづらいので、こしょうで目印をつけておけば、焼き上がりを金串で確認するさいのよい目安になります。

■三段階の温度で焼き上げる

オーブンは220℃からスタートし、まず高温で衣を一気に固めます。少し焼き固まったところで200℃に下げて15分、さらに180℃に落として10分。段階的に温度を下げながら、じっくりと火を通していきます。

焼き上がったら、まずは客席へ。丸い切れ目を入れて塩釜を開けるプレゼンテーションは、この料理ならではの楽しみです。

ソースには、白ワインの代わりにジンを使います。生姜とコブミカンの葉を加えて煮詰め、フュメ・ド・ポワソンでさらに煮詰めたら、生クリームとキャビアを合わせて仕上げます。腹に詰めた生姜とコブミカンの葉をソースにも使うことで、料理全体の一体感が高まります。


【参考図書】

古典技法を追求!
フランス料理 魚介の火入れ技術


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■A4変・112ページ
■ISBN-13:9784751115381
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